2023-12-18 国立遺伝学研究所
花粉症などのアレルギー性結膜炎では目の強いかゆみを伴いますが、これまでからだのかゆみに比べて目のかゆみが伝えられるしくみは不明でした。
情報・システム研究機構国立遺伝学研究所マウス開発研究室の高浪景子元助教(現在は奈良女子大学研究院生活環境科学系准教授)と小出 剛准教授らは、長岡技術科学大学の霜田 靖准教授、岡山大学の坂本浩隆教授らのグループとの共同研究で、脳幹の目のかゆみを伝達する神経機構について明らかにしました。
本研究では、マウスが目にかゆみ刺激を受けると、脳幹のSp5C表層の神経が特異的に活性化され、この領域に発現するGRP受容体の神経の活性化が起こることを見出しました。また、この領域にGRPを投与すると、実際には目にかゆみ刺激がないにも関わらず、目を強く引っ掻く行動がみられ、脳を刺激することで目にかゆみが誘発されることを見出しました(図)。また、Sp5CのGRP受容体発現細胞を障害すると、一部の目のかゆみ刺激に対する引っ掻き行動が抑制されました。このことから、目を含む顔のかゆみの伝達にGRPという神経ペプチドホルモンとその受容体が関与することを明らかにしました。
目のかゆみを伴うアレルギー性結膜炎(花粉症を含む)は、大気汚染などの影響を受け、世界的に増加しています。
本成果は、花粉症などの目の難治性掻痒症に対する新たな治療法の開発に貢献できる可能性があります。
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(19K06475, 22K06058, 22H02656)、国立遺伝学研究所公募型共同研究NIG-JOINT(リンク:https://www.nig.ac.jp/nig/ja/research-infrastructure-collaboration/nig-collaboration-grant)、武田科学振興財団ライフサイエンス研究助成、情報・システム研究機構、奈良女子大学の支援を受けて行われました。
本研究成果は、2023 年 11 月 30 日付で、国際科学雑誌「Frontiers in Molecular Neuroscience」にオンライン掲載されました。
図: 脳幹Sp5CにGRPを投与してSp5Cに発現するGRP受容体(GRPR)を活性化させると、目や顔を強く引っ掻く行動がみられる。
Function of gastrin-releasing peptide receptors in ocular itch transmission in the mouse trigeminal sensory system
Keiko Takanami*, Masaya Kuroiwa, Ren Ishikawa, Yuji Imai, Akane Oishi, Midori Hashino, Yasushi Shimoda, Hirotaka Sakamoto, Tsuyoshi Koide
*責任著者
Frontiers in Molecular Neuroscience (2023) 16:1280024 DOI:10.3389/fnmol.2023.1280024