2024-01-09 国立遺伝学研究所
運動は筋収縮の強度と速度を正確に制御する必要があり、これは機能的に異なる運動ニューロン(MNs)のサブタイプを使用することによって達成されます。MNsは運動に不可欠であり、疾患に対しては異なる感受性を持っていますが、発生中にMNsがどのようにして機能的なサブタイプに固有の性質を獲得するかについてはほとんどわかっていません。私たちは、胚および仔魚期のゼブラフィッシュでのシングルセルRNAプロファイリングを行うことにより、MNsの機能的なサブタイプの新しい、および保存された分子的な特徴を明らかにし、初期のおよび成熟したMNsの両方で発現する遺伝子を特定しました。さらに変異体でのMNsの発生を解析することにより、MNsの機能的なサブタイプの分化に必要な分子プログラムを解析し、Prdm16とMecomという2つの進化的に保存された転写因子が、速いMNsの分化にとって不可欠な決定因子であり、prdm16またはmecomの欠損により、速いMNsは遅いMNsと似た転写プロファイルと神経支配を示しました。これらの結果は脊椎動物のMNsの分子的多様性を明らかにし、機能的なサブタイプが内在的な転写因子コードを介して形成されることを示しています。
本研究は、ニューヨーク大学David Schoppik博士らとの共同研究として行われました。
図1:ゼブラフィッシュの運動ニューロンの多様性。転写因子prdm16とmecomの発現が速い運動ニューロンを規定し、これら転写因子の欠損により速い運動ニューロンが遅い運動ニューロンの特徴を示すことを表している。
図2:トランスジェニックフィッシュを用いたprdm16とmecom発現運動ニューロンのオーバーラップ。
Determinants of motor neuron functional subtypes important for locomotor speed
Kristen P. D’Elia, Hanna Hameedy, Dena Goldblatt, Paul Frazel, Mercer Kriese, Yunlu Zhu, Kyla R. Hamling, Koichi Kawakami, Shane A. Liddelow, David Schoppik, and Jeremy S. Dasen
Cell Reports (2023) 42, 113049. DOI:10.1016/j.celrep.2023.113049