2024-02-07 北海道大学,科学技術振興機構
ポイント
●ミトコンドリアを活性化した移植用ヒト由来心筋前駆細胞が細胞移植療法の治療効果向上に寄与。
●心筋虚血再灌流かんりゅうモデルラットを用いた細胞移植療法の検証実験において、良好な治療成績を獲得。
●ミトコンドリア活性化ヒト由来心筋前駆細胞(Human MITO cell)の臨床応用に期待。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の山田勇磨教授、原島秀吉教授と同大学病院小児科の武田充人講師、白石真大医員の研究グループは、ミトコンドリアを活性化した移植用ヒト由来心筋前駆細胞(Human MITO cell)の製造に成功し、心筋虚血再灌流モデルラットを用いた細胞移植療法の検証実験を行い、「ミトコンドリア活性化ヒト由来心筋前駆細胞(以下Human MITO cell)」が心疾患を対象とした細胞移植療法において良好な治療成績を示すことを報告しました。
細胞移植療法は、心不全に対する有望な治療法として障害心筋の再生効果が期待されていますが、治療効果の向上が課題とされています。そのため研究グループは、エネルギー産生を担うミトコンドリアを活性化した移植用ヒト由来心筋前駆細胞(Human MITO cell)を製造すれば、治療効果の向上が期待できると考えました。Human MITO cellは、ミトコンドリア標的型ナノカプセル(以下MITO-Porter)を用いてヒト心筋前駆細胞(CDC: cardiosphere-derived cell)のミトコンドリアに機能性分子を送達し製造します。心筋虚血再灌流モデルラットを作成しHuman MITO cellを用いた細胞移植の治療効果を評価した結果、Human MITO cell移植群において、心機能の改善、心筋組織の線維化を抑制する治療効果が観察できました。これらの治療効果は、Human MITO cellの心筋投与だけでなく静脈投与でも認められ、従来の細胞移植療法の効果を大幅に上回るものです。
Human MITO cellを移植細胞として用いることで、細胞移植の課題点を解決する可能性があり、心不全を含む心疾患治療への応用が期待されます。さらに、Human MITO cellの投与経路を検討することで、細胞移植療法の臨床応用を飛躍的に加速させることが期待されます。
本研究成果は、2024年2月3日(土)公開のJournal of Controlled Release誌にオンライン掲載されました。
論文名:Human cardiosphere-derived cells with activated mitochondria for better myocardial regenerative therapy(ミトコンドリア活性化ヒト心筋前駆細胞(Human MITO cell)を用いた細胞移植療法の確立)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2024.01.058
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