2018/09/10 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ,国立大学法人 高知大学医学部,慶應義塾大学医学部,国立大学法人 大阪大学大学院,国立大学法人 東京医科歯科大学
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 免疫シグナルプロジェクト仲 哲治 招へいプロジェクトリーダー(国立大学法人 高知大学医学部 免疫難病センター教授)、慶應義塾大学医学部(金井 隆典 消化器内科学 教授)、国立大学法人 大阪大学大学院医学系研究科(竹原 徹郎 消化器内科学 教授)、国立大学法人 東京医科歯科大学 消化器内科(渡辺 守 消化器内科 教授)らのグループは、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(以下、LRG)が炎症性腸疾患の疾患活動性マーカーとなることを発見しました。
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免疫炎症性難病である炎症性腸疾患の疾患活動性を迅速に評価する 血清バイオマーカー(LRG)の実用化
2018年9月10日
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 免疫シグナルプロジェクト 仲 哲治 招へいプロジェクトリーダー(国立大学法人 高知大学医学部 免疫難 病センター教授)、慶應義塾大学医学部(金井 隆典 消化器内科学 教授)、 国立大学法人 大阪大学大学院医学系研究科(竹原 徹郎 消化器内科学 教授)、 国立大学法人 東京医科歯科大学 消化器内科(渡辺 守 消化器内科 教授)らの グループは、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(以下、LRG)が炎症性腸疾 患の疾患活動性マーカーとなることを発見しました。
仲らの研究グループと積水メディカル株式会社(代表取締役社長:田頭秀雄) は、LRGの迅速な定量法を開発し、これを実用化するために共同で、「炎症性 腸疾患の疾患活動性評価の血清バイオマーカー」の開発に着手しました。臨床 性能試験の結果、炎症性腸疾患の疾患活動性を評価する上で血清LRGが有用で あることが認められましたので、2016年3月31日に厚生労働省に体外診断用医薬 品として製造販売承認申請を行い、この度、2018年8月21日付で、製造販売承認 取得に至りました。これら一連の研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発 機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業の支援を受けて実施しています。
免疫炎症性難病の1つである潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患 は、これまで有効な血清バイオマーカーがなく、疾患活動性の迅速な評価に難 渋していました。今回、血清LRGの測定方法が承認されたことにより、今後は 血液検査による炎症性腸疾患の迅速な活動性評価が可能となります。さらに今 後は、炎症性腸疾患以外に、バイオ製剤使用時の関節リウマチなど様々な炎症 性疾患への応用も視野に入れて、共同研究開発を進めます。
□ 炎症性腸疾患について
炎症性腸疾患は腸管に慢性・再発性の炎症を引き起こす原因不明の難病で、 潰瘍性大腸炎とクローン病に大別され、厚生労働省により医療費助成対象疾病 2 (指定難病)に定められています。我が国の患者数は、近年、増加の一途をた どっています。標準的治療として5-アミノサリチル酸製剤やステロイド製剤、免 疫調節薬が使用されてきましたが、近年生物学的製剤である抗TNF-α抗体製剤の 導入により劇的に治療成積が向上し、内視鏡的に炎症がない状態である粘膜治 癒も達成できるようになりました。現在の治療指針としては、各種薬剤を適切 に組み合わせ、粘膜治癒をもたらすことが病勢のコントロールと再燃予防に重 要とされています。しかしながら、粘膜病変の活動性を反映する有用なバイオ マーカーが無いことが、炎症性腸疾患の治療において大きな障壁となっていま す。
□ 現在の炎症性腸疾患の活動性評価について
大腸内視鏡検査は炎症性腸疾患の病態を正確に評価することが出来ますが、 侵襲性が高く、また疾患の増悪リスクがあり、患者さんへの負担が大きいこと から頻回に施行することが困難です。そこで実臨床では、白血球数や赤血球沈 降速度(ESR)、C反応性蛋白(CRP)等の採血データと、臨床症状を元にした 臨床活動性指数を組み合わせて総合的な活動性評価が行われています。しかし、 上記の採血データは必ずしも正確に粘膜病変を反映しないことが知られており、 さらに、臨床活動性指数は、便の回数や性状、患者さんの自覚症状や医師から みた重症度を元に算出され、客観性に乏しく内視鏡所見との乖離が大きいとい う問題があります。これらの背景から、患者さんの病態を正確かつ簡便に把握 するための有用なバイオマーカーの開発が強く求められていました。
□LRGの測定方法について
今回共同開発した炎症性腸疾患の疾患活動性を迅速に測定する方法は、患者 さんから採取した少量の血液を用いて、血清中のLRGの濃度を、ラテックス免 疫比濁法とよばれる測定方法により数分で測定するものです。この測定は検査 施設を持つ病院で実施可能ですので、その日の診察の間に結果を得る事が出来 ます。血液中のLRG濃度は、従来の血液マーカーよりも、内視鏡検査による疾 患活動性評価と非常に強く相関します。そのため、治療に伴う疾患活動性の変 化を簡便かつ適切に評価でき、不要な内視鏡検査を回避することや、治療薬の 増減や変更を判断することが容易になり、医療の質を高めるのみならず、医療 費削減にも繋がることも期待されます。また、LRGは炎症性腸疾患以外にも、 関節リウマチなど様々な炎症性疾患に有効なマーカーとなる事が分かってきて おり、他の難病治療にも貢献することが期待されます。
【本研究への支援】
本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化研究事 業の支援を受けて実施されました。(研究開発課題名:「新規治療標的分子LRG の炎症性腸疾患における役割の解明と創薬への応用」)
【本件に関するお問い合わせ先】
国立大学法人 高知大学医学部 免疫難病センター 教授 仲 哲治
【AMED 事業に関するお問い合わせ先】
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 戦略推進部 難病研究課