特定のウイルスに感染した後、呼吸器感染症のリスクが上昇することを発見

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2018/09/10 国立大学法人 東北大学大学院医学系研究科,国立研究開発法人 日本医療研究開発機構,京都大学ウイルス・再生医科学研究所,フィリピン国熱帯医学研究所

発表のポイント
  • フィリピンでの疫学調査によって、アデノウイルス・インフルエンザウイルス・パラインフルエンザウイルス・ライノウイルスに感染した小児は、その後呼吸器感染症に罹患するリスクが高まることがわかった。
  • これらのウイルスに感染した小児に対する重点的なケアの必要性や、これらのウイルスに対するワクチン戦略を考えるうえで、重要な知見である。
研究概要

東北大学大学院医学系研究科微生物学分野の押谷 仁(おしたに ひとし)教授と京都大学ウイルス・再生医科学研究所の古瀬 祐気(ふるせ ゆうき)特定助教らのグループは、フィリピン国熱帯医学研究所と共同研究を行い、特定のウイルスに罹患したのちに呼吸器感染症のリスクが高まることを報告しました。これまでに知られていなかった呼吸器感染症の危険因子が明らかになった重要な報告であり、より効果的な患者ケアや疾患予防のための公衆衛生的な対策へと貢献することが期待されます。

本研究成果は、2018 年 9月5日 The Journal of Infectious Diseases(電子版)に掲載されました。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)「フィリピン感染症研究拠点における国際共同研究の推進(課題番号 JP18fm0108013)」および地球規模課題対応国際科学技術協力事業(SATREPS)「小児呼吸器感染症の病因解析・疫学に基づく予防・制御に関する研究(課題番号 JP16jm0110001)」、国際協力機構(JICA)(SATREPS)、日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号 16H02642)、卓越研究員事業(課題番号 16809810)の支援を受けて行われました。

研究内容

急性呼吸器感染症は、特に途上国の小児の主要な死亡原因のひとつとなっています。多くのウイルス・細菌などのなかで、インフルエンザウイルスやRSウイルスなどは主要な原因です。ほとんどの小児は乳児期以降これらのウイルスに繰り返し感染していることが知られていました。

本研究では、特定のウイルスに感染することによって、その後の呼吸器感染症のリスク(罹りやすさ)が変化するのかを調べました。フィリピンにおいて2014年~2016年の間に約4,000人の小児を対象に、咳や呼吸困難など呼吸器症状を毎日記録し、さらに症状を呈した場合には鼻咽頭ぬぐい液を採取し、遺伝子検査によってそこに存在するウイルスの種類を調べました。特定のウイルスに罹患した小児をその後約1年間追跡し、そのウイルスに罹患しなかった小児と比べて呼吸器感染症に罹患しやすくなるのかをハザードモデルによって解析しました。その結果、アデノウイルス・インフルエンザウイルス(A型)・パラインフルエンザウイルス(4型)・ライノウイルス(C種)に感染した小児は、つぎの呼吸器感染症に罹患するリスクが1.3~1.6倍ほど高まることがわかりました。

本研究結果は、小児における呼吸器感染症のリスクを、これまでになかった視点から検討した重要な報告です。どのような要因によって呼吸器感染症のリスクが高まるのかがわかれば、診療活動の一助となり、さらには医療資源の効果的な使い方やワクチン戦略などの対策へと今後活かされていく可能性があります。

論文題目

掲載雑誌名:The Journal of Infectious Diseases

Title:Association between preceding viral respiratory infection and subsequent respiratory illnesses among children: A prospective cohort study in the Philippines.
Authors:Furuse Y, Tamaki R, Okamoto M, Saito-Obata M, Suzuki A, Saito M, Imamura T, Khandaker I, Dapat I, Ueno F, Alday PP, Tan AG, Inobaya MT, Segubre-Mercado E, Tallo V, Lupisan S, Oshitani H.
日本語タイトル:「先行するウイルス感染とその後の呼吸器感染症の関係:フィリピンにおける前向きコホート研究」
著者:古瀬 祐気、玉記 雷太、岡本 道子、齊藤(小畑) 麻理子、鈴木 陽、斉藤 繭子、今村 忠嗣、Khandaker、Dapat、上野 史彦、Alday、Tan、Inobaya、Segubre-Mercado、Tallo、Lupisan、押谷 仁
お問い合わせ先
研究に関すること

国立大学法人 東北大学大学院 医学系研究科微生物学分野
教授 押谷 仁(おしたに ひとし)

取材に関すること

国立大学法人 東北大学大学院医学系研究科・医学部 広報室

AMED事業に関すること

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
戦略推進部 感染症研究課(J-GRID担当)

国際事業部 国際連携研究課(SATREPS担当)

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