手術支援ロボット「ダビンチSP」を用いた体の表面に傷がつかないがん手術を実施~ 新たな「ロボット手術・開発センター」から高難度症例に対する低侵襲治療の開発・拡大を目指す~

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2024-04-15

国立がん研究センター

発表のポイント

  • 国立がん研究センター中央病院は、がん専門医療機関で初となる最新の手術支援ロボット「ダビンチSP」を導入し、体の表面に傷をつけずに、高難度症例である頭頸部の手術(中咽頭がん手術)を実施しました。
  • ダビンチSPにより、頭頸部の手術以外でも、乳腺・婦人科領域、泌尿器、消化器など、狭い範囲での手術操作が要求されるがんや整容性が問われるがんに対してより侵襲の少ない手術が可能となりました。
  • 国立がん研究センター中央病院では、ダビンチSPの導入と合わせ、新たに「ロボット手術・開発センター」を設置しました。ロボット手術・開発センターでは、ダビンチSPなど手術支援ロボットを用いた高難度症例に対する低侵襲治療の術式開発を確立し、全国の医療機関へ拡大するための先進的な役割を果たしてまいります。

集合写真
ダビンチSPと島田中央病院長(当時)、藤元副院長
(診療担当)、塚本ロボット手術・開発センター長
(2024年3月22日撮影)

手術支援ロボット「ダビンチSP」を用いた体の表面に傷がつかないがん手術を実施~ 新たな「ロボット手術・開発センター」から高難度症例に対する低侵襲治療の開発・拡大を目指す~
ダビンチSPのアームの先端部分
今回の中咽頭がん手術は、この部分を口から挿入

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:瀬戸 泰之)は、全国のがん専門医療機関の中で初となる手術支援ロボット「ダビンチSP」を購入し、2024年4月上旬に、高難度症例である頭頸部の手術(中咽頭がん手術)を実施し、安全に終了しました。今回の中咽頭がん手術では、ロボットのアームを患者さんの口から挿入し、口の中でがんの切除を完了しました。

国立がん研究センター中央病院では、これまで、ダビンチSPの従来型であるダビンチXiを2台活用し、年間で400件以上の泌尿器や消化器、婦人科領域のがんを中心としたロボット手術を実施してきました。今回、新たに最新型のダビンチSPを導入し、従来型のロボットでは操作に制限があった頭頸部領域、乳腺領域、さらには進行した一部高難度症例において実施可能となり、当院におけるロボット手術の対象範囲が大きく拡大します。

また、導入に先駆けて、2024年1月には、侵襲の少ない質の高い手術、高難度症例に対する治癒を求めた挑戦的な手術を実施・開発する「ロボット手術・開発センター」を創設しました。

当院の総力を挙げて、日本のロボット手術の推進・技術向上に努めてまいります。

ダビンチSPについて

ダビンチSPは、米国インテュイティブサージカル社が提供する最新の手術支援ロボットで、2023年1月に日本で薬事承認されました。

従来型のダビンチXiは、アームが4本であるのに対し、ダビンチSPはシングルポート(アームが1本)となっており、より侵襲が少なく整容性を向上させたロボット手術が期待できます。

また、当院には、各種臓器に発生するがんごとに、外科手術やロボット手術の経験豊富な専門医が数多くいます。これら専門医がダビンチSPを活用することにより、体の奥の狭い部位に発生していたためこれまでロボット手術が困難であったがんや、高難度症例でも、ロボット手術を実施できるようになります。患者さんにとっては、ダビンチSPの活用により、従来のロボット手術よりも体への負担が少なく、術後の回復がより早くなるメリットがあります。

本体

ダビンチSPのアーム先端部分
アーム同士の干渉がなく、口からロボットを挿入できる咽喉頭がんや、傷を目立たせたくない乳がんの手術により広く活用できるようになります。先端部分は、人間の手のように柔軟に動くため、より感覚的に操作が可能です。

様子

ダビンチSP術者の様子
術者は座って作業が可能であり、手振れや疲労感が軽減されます。

ロボット手術・開発センターについて

国立がん研究センター中央病院では、2024年1月に「ロボット手術・開発センター」を創設し、

  • ロボット手術に関わる全診療科を挙げた、侵襲の少ない質の高い手術、高難度症例に対する治癒を求めた挑戦的な手術の実施
  • 日本の繊細な手術にマッチした手術機器の開発の強化
  • ロボット手術を牽引する若手外科医の育成をはじめとした、日本のロボット手術の技術向上

などを進め、がんに関する国立高度専門医療研究センターとして、がん領域でのロボット手術の推進に努めてまいります。

ロボット手術・開発センターhttps://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/robotic_surgery/index.html

今後の展開

当院では、ダビンチSPを活用し、頭頸部領域、乳腺・婦人科領域、泌尿器、消化器などに発生した難度の高い進行がん手術を中心に症例を積み重ねながら、シングルポートによるロボット手術の術式を新たに確立し、全国の医療機関への普及へ向けた先進的な役割を果たして参ります。
ダビンチSPの活用により、従来よりも低侵襲なロボット手術が可能となるがん手術は以下のとおりであり、年間200件程度実施する予定です。

1.頭頸部がん手術

口からロボットを入れて咽喉頭がんの切除を行います。従来型ではアームの数が多く互いに干渉し合うため限られた患者さんでしか活用できませんでした。

2.乳がん手術

乳がんの乳輪温存乳腺全切除術に使用します。乳頭や乳輪への血流や神経を温存しつつ、整容性を向上させた創(傷)が目立たない根治手術を行うことが可能になります。この乳輪温存乳腺全切除術は、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)に対するリスク低減のための予防切除としても実施することができるようになります。

3.大腸がん・前立腺がん・婦人科領域の手術など

狭い骨盤の奥に発生したがんで手術操作が困難である高難度症例の直腸がんや前立腺がん、婦人科がんなどで、ダビンチSPを活用して、より低侵襲なロボット支援手術を実施できるようになります。

メッセージ

国立がん研究センター中央病院 副院長(診療担当) 藤元 博行

当院は、これまで10年以上にわたり、泌尿器がんや大腸がんからロボット手術を開始し、食道がん、婦人科がん、胃がん、膵臓がんに対する低侵襲手術に力を入れてきました。今回、新たに最新のダビンチSPが加わり、頭頸部がんや乳がんに対してもロボット手術ができるようになりました。安全性・完治性が高く体の負担が少ないロボット手術を一層推進し、一人でも多くの患者さんに高度で質の高い医療を提供すべく努力してまいります。

国立がん研究センター中央病院 ロボット手術・開発センター長 塚本 俊輔

当院では今回、手術侵襲が少ないと考えられる最新鋭のダビンチSPを導入しました。この機器の活用により、本手術が普及していなかった分野でも、精細な手術を可能とする手術支援ロボットの恩恵を受けることができるようになります。ロボット手術・開発センターでは、低侵襲かつ質の高い手術の実施、ロボット手術の更なる発展を見据えた機器開発、次世代のロボット手術のリーダーの育成を3つの柱として、がんに立ち向かうよう努力を続けます。

お問い合わせ先

ロボット手術・開発センターについて
国立研究開発法人国立がん研究センター
ロボット手術・開発センター 塚本 俊輔

広報窓口
国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室

医療・健康
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