屋外活動時間を増やすことが子どもの近視発症を予防~ランダム化比較試験を集約したシステマティックレビューの結果~

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2024-06-21 京都大学

近年、近視の増加が世界的な問題となっています。近視は、近くのものははっきりと見える一方で遠くのものがぼやけて見える屈折異常で、適切な眼鏡やコンタクトレンズ等で屈折矯正を行わないと日常生活に不便が生じます。それのみならず、近視は緑内障や網膜剥離等の他の眼科疾患の危険因子となることが知られています。現在、東アジアを中心として世界的に近視が増加していることから、近視の発症を減らしたり進行を遅らせることが喫緊の課題となっており、様々な療法が試みられています。これまで、「学校等において屋外活動を推奨して屋外活動時間を増やすことで、近視の進行を遅らせることができるのではないか」という仮説をもとにランダム化比較試験が複数行われており、一定の成果が報告されています。しかし、個別の報告から結論を導き出すには限界があり、公平な視点からの統合的な解釈が求められていました。

木戸愛 医学研究科客員研究員、三宅正裕 同特定講師、渡辺範雄 同客員研究員の研究グループは、これまでに実施された、または実施中のすべてのランダム化比較試験を網羅的に集めて、それらの結果を統合して解釈するシステマティックレビューという研究手法を用いました。この結果、屋外活動の時間を増やすことは、子供の近視の進行予防になるかどうかは未だ不明確なものの、子どもの近視発症予防につながる可能性が高いことを明らかにしました。

本研究成果は、2024年6月12日に、国際学術誌「Cochrane Database of Systematic Review」にオンライン掲載されました。

屋外活動時間を増やすことが子どもの近視発症を予防~ランダム化比較試験を集約したシステマティックレビューの結果~研究結果イメージ

研究者のコメント

「近視の程度は、7割方が遺伝子レベルで決まっているというシステマティックレビューの結果がある一方で、近年の近視の増加は目を見張るものがあり、これは主に高学歴化や近見作業の増加といった環境因子によるものと考えられています。今回我々は、重要な環境因子の一つである屋外活動に焦点を当て、『屋外活動を増やすことが近視の発症や進行を抑制するのか?』ということを高いエビデンスレベルで明らかにするために、システマティックレビューという研究手法を用いました。これまでの個別の研究においては、屋外活動の増加による近視の進行抑制効果が報告されていたものの、それらを統合した本レビューにおいては一貫した結果が認められず、近視の進行抑制に有効という結論を導き出すことをできなかったことは意外でした(今後、ランダム化比較試験が蓄積されることで、将来的には近視抑制に有効という結果となるのかもしれません)。一方で、屋外活動の増加は近視の発症予防には有効である事については明らかとなり、高い信頼性を持って重要な知見を報告できたと考えています。ただ本レビューには本邦からのデータは含まれておりませんので、今後本邦においても評価を行っていく必要があると思います。」

詳しい研究内容について

屋外活動時間を増やすことが子どもの近視発症を予防―ランダム化比較試験を集約したシステマティックレビューの結果―

研究者情報

研究者名:三宅 正裕
渡辺 範雄

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/14651858.CD013549.pub2

【書誌情報】
Ai Kido, Masahiro Miyake, Norio Watanabe (2024). Interventions to increase time spent outdoors for preventing incidence and progression of myopia in children. Cochrane Database of Systematic Reviews, 6, CD013549.

医療・健康
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