加齢に伴う正常組織の遺伝子異常とがん化のメカニズムを解明~食道上皮は加齢に伴いがん遺伝子の変異を獲得した細胞で再構築される~

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2019/01/08 京都大学

 小川誠司 医学研究科教授、横山顕礼 医学部附属病院特定助教、垣内伸之 医学研究科研究員、吉里哲一 同助教、武藤学 同教授、宮野悟 東京大学教授らの研究グループは、食道がんが高度の飲酒歴と喫煙歴を有する人に好発することに着目し、「一見正常」な食道に生じている遺伝子変異を、最新の遺伝子解析技術で詳細に解析することにより、がんが高齢者で発症するメカニズムの一端を解明することに成功しました。

本研究の結果、私たちの食道上皮は、加齢にともなって、食道がんで頻繁に認められる遺伝子の変異を獲得した細胞が徐々に増えていき、70歳を超える高齢者では、全食道面積の40%から80%が、こうしたがん遺伝子の変異をもった細胞で置き換わることがわかりました。こうした食道上皮の異常な細胞による「再構築」は、すでに乳児の時期から始まっており、全ての健常人で例外なく認められましたが、高度の飲酒と喫煙歴のある人では、この過程が強く促進され、しかも、がんで最も高頻度に異常が認められるTP53遺伝子や染色体に異常を有する細胞の割合が顕著に増加することが明らかになりました。

本研究成果は、なぜがんが高齢者に好発するのか、また、それがどのようにして飲酒や喫煙といったリスクによって促進されるのかについて、重要な手がかりを与える知見です。

本研究成果は、2019年1月3日に、国際学術誌「Nature」のオンライン版に掲載されました。

 

加齢に伴う正常組織の遺伝子異常とがん化のメカニズムを解明~食道上皮は加齢に伴いがん遺伝子の変異を獲得した細胞で再構築される~

図:本研究の概要

詳しい研究内容について

加齢に伴う正常組織の遺伝子異常とがん化のメカニズムを解明 -食道上皮は加齢に伴いがん遺伝子の変異を獲得した細胞で再構築される-

書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1038/s41586-018-0811-x

Akira Yokoyama, Nobuyuki Kakiuchi, Tetsuichi Yoshizato, Yasuhito Nannya, Hiromichi Suzuki, Yasuhide Takeuchi, Yusuke Shiozawa, Yusuke Sato, Kosuke Aoki, Soo Ki Kim, Yoichi Fujii, Kenichi Yoshida, Keisuke Kataoka, Masahiro M. Nakagawa, Yoshikage Inoue, Tomonori Hirano, Yuichi Shiraishi, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Masashi Sanada, Yoshitaka Nishikawa, Yusuke Amanuma, Shinya Ohashi, Ikuo Aoyama, Takahiro Horimatsu, Shin’ichi Miyamoto, Shigeru Tsunoda, Yoshiharu Sakai, Maiko Narahara, J. B. Brown, Yoshitaka Sato, Genta Sawada, Koshi Mimori, Sachiko Minamiguchi, Hironori Haga, Hiroshi Seno, Satoru Miyano, Hideki Makishima, Manabu Muto & Seishi Ogawa (2018). Age-related remodelling of oesophageal epithelia by mutated cancer drivers. Nature.

朝日新聞(1月3日 3面)、京都新聞(1月3日 29面)、産経新聞(1月3日 3面)、毎日新聞(1月6日 20面)および読売新聞(1月7日夕刊 10面)に掲載されました。

医療・健康細胞遺伝子工学生物化学工学
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