2024-10-16 京都大学
ヒトを含む脊椎動物にとって、眼から得られる視覚の情報は外界の変化をとらえる上で重要であり、そのために眼にロドプシンという光センサーを持ちます。藤藪千尋 理学研究科博士課程学生、山下高廣 同講師、行者蕗 甲南大学研究員、日下部岳広 同教授、佐藤恵太 岡山大学助教、大内淑代 同教授、川野絵美 奈良女子大学准教授の共同研究グループは、魚類がロドプシンを眼だけでなく脳での「みる」仕組みにも使い分けていることに着目し、光センサーのユニークな進化の道筋を明らかにしました。
ヒトを含む多くの脊椎動物のロドプシン遺伝子は、イントロンに分割される遺伝子構造を持ちます。しかし、多くの魚類は例外的にイントロンがないロドプシン遺伝子を眼で利用し、イントロンのあるロドプシン遺伝子を眼ではなく脳の松果体で利用します。本研究では、魚類の中でも比較的古くに多様化し、任天堂のゲーム「どうぶつの森」にも登場する「古代魚」を中心に解析を行い、約4億年前に起こった珍しい遺伝子重複を皮切りにして、新たに誕生させたロドプシン遺伝子を眼で使う一方、もともと眼で使っていたロドプシン遺伝子を脳で使うようになり、さらにはもともと脳で使っていた別の光センサーピノプシンが代替される形で姿を消した、という魚類における光センサーの玉突き的置換プロセスを明らかにしました。
本研究成果は、2024年10月8日に、国際学術誌「Cellular and Molecular Life Sciences」にオンライン掲載されました。
「古代魚」を中心とした解析から明らかとなった魚類における光センサーの玉突き的置換プロセス
研究者のコメント
「ユニークな遺伝子重複をも駆使して眼と脳の光センサーを柔軟に置き換えた魚類は、もしかすると新しいもの好きなのかもしれません。新しい光センサーを使うことで、光の感じ方に何か違いはあったのでしょうか。ピノプシンと比べたロドプシンの使用感を、是非とも聞いてみたいところです。」(藤藪千尋)
「ここでは光センサーの進化の謎を探るため、水族館やゲーム『どうぶつの森』でお目にかかる魚たちを含めて調べました。ただ、今回の解析で重要な役割を果たしたガーはゲームに登場するものの、ターポン(イセゴイ)は登場しません。任天堂さん、次回の『どうぶつの森』では是非よろしくお願いします!」(山下高廣)
詳しい研究内容について
眼と脳で「みる」仕組みの玉突き的変化を「古代魚」から探る―「どうぶつの森」の魚たちが教えてくれる光センサーのユニークな進化―
研究者情報
研究者名:山下 高廣
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1007/s00018-024-05461-3
【書誌情報】
Chihiro Fujiyabu, Fuki Gyoja, Keita Sato, Emi Kawano-Yamashita, Hideyo Ohuchi, Takehiro G. Kusakabe, Takahiro Yamashita (2024). Functional diversification process of opsin genes for teleost visual and pineal photoreceptions. Cellular and Molecular Life Sciences, 81, 428.