社会寄生性ケアリ2種はホストワーカーに実母である女王の殺害を強要する~望まぬ娘に実母を殺させる教唆(きょうさ)型寄主操作の発見~

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2025-11-18 九州大学

アリやハチなど社会性昆虫の中には他種のコロニーに侵入して労働力を利用する「社会寄生性」の例が知られており、その中でも一時的社会寄生に属する2種のケアリ(寄生女王)が、自らの利益のためにホストコロニーを乗っ取る過程を新たに解明した。研究では、寄生女王はホスト女王に蟻酸と思われる液体を噴射。これによりホストワーカーが「母である女王」を攻撃対象と誤認し、結果として実母の殺害を強制されるという極めて異例の「教唆型寄主操作」が明らかになった。複数回観察されたこの行動は、ホスト女王の死因が寄生女王の直接殺害ではなく、ホストワーカーによる集中攻撃であることを示唆している。これは生物学上でも極めて稀な戦略であり、社会寄生性の進化や利己的遺伝子理論を巡る議論に新たな視点を提供する。なお、同属内で2回以上進化したと考えられる社会寄生起源において、この教唆型操作が収斂(しゅうれん)進化として作用している可能性も示された。

社会寄生性ケアリ2種はホストワーカーに実母である女王の殺害を強要する~望まぬ娘に実母を殺させる教唆(きょうさ)型寄主操作の発見~
(左から)蟻酸噴射によりすでに娘のワーカーに襲われているキイロ女王に追加の蟻酸噴射をするテラニシ、ホストワーカーに解体されたキイロ女王、トビケ女王に蟻酸噴射するアメケ、娘のワーカーから攻撃を受けるトビケ女王

<関連情報>

社会的に寄生する女王アリは、宿主の働きアリの女王アリ殺しを化学的に誘発する Socially parasitic ant queens chemically induce queen-matricide in host workers

Taku Shimada ∙ Yuji Tanaka ∙ Keizo Takasuka
Current Biology  Published:November 17, 2025
DOI:https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.09.037

Summary

Matricide — the killing of a mother by her own genetic offspring — is rarely observed in nature, but not unheard-of. Among animal species in which offspring remain with their mothers, the benefits gained from maternal care are so substantial1 that eliminating the mother almost never pays, making matricide vastly rarer than infanticide. Here, we report matricidal behavior in two ant species, Lasius flavus and Lasius japonicus, where workers kill resident queens (their mothers) after the latter have been sprayed with abdominal fluid by parasitic ant queens of the ants Lasius orientalis and Lasius umbratus.

生物環境工学
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