アルツハイマー病におけるアミロイド形成制御法を開発~光酸素化によるタウ凝集抑制効果を解明~

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2019-06-03 東京大学

東京大学大学院薬学系研究科機能病態学教室の堀由起子助教と富田泰輔教授、同有機合成化学教室の相馬洋平グループリーダーと金井求教授らは、アルツハイマー病治療を目指して高活性を有する光酸素化触媒を新たに開発しました。開発された触媒を用いた光酸素化が、アルツハイマー病の発症原因であるタウの凝集を抑制する効果を持つことを明らかにし、本研究成果は2019年4月26日付でChemical Communications電子版に掲載されました。

アルツハイマー病は進行性の神経変性疾患であり、社会の高齢化に伴い患者数が激増していますが、未だ根本治療法は開発されていません。アルツハイマー病の特徴的な病理学的所見の一つに、タウと呼ばれるタンパク質が異常に凝集し、「アミロイド」と呼ばれる特徴的な線維構造を形成して細胞内に蓄積する神経原線維変化が挙げられます。このタウアミロイドの形成・蓄積とその病理の広がりが認知機能低下と相関することから、その阻害がアルツハイマー病の治療戦略の一つとなると考えられています。

本研究グループでは、アミロイドに対する酸素原子付加によって、さらなるアミロイド形成を阻害する戦略を独自に考案し研究を進めています。そして光刺激及びアミロイドの高次構造認識によって自在に酸素化反応をオン・オフ可能でアミロイドに対し選択的に作用する光酸素化触媒を開発してきました。今回、より酸素化活性の高い新規光酸素化触媒の開発に成功し、またタウアミロイド選択的に酸素化が可能であることを明らかにしました。さらに、培養細胞内においても、本ストラテジーによる酸素化によりタウアミロイド形成誘導能が減少することを明らかにし、タウアミロイドの病理形成の広がりをも阻害できる可能性が示唆されました。

本研究成果は、光酸素化触媒を用いたアルツハイマー病に対する新規根本治療戦略の提示に繋がることが期待されます。

「基礎研究の立場から、いまだに治療法の無いアルツハイマー病の根本治療につなげたいと思い、研究をしてきました」と堀助教は話します。「まだまだ治療法確立までの道のりは遠いですが、この成果を足掛かりにアルツハイマー治療へと発展させていきたいと思います」。

論文情報

Takanobu Suzuki, Yukiko Hori, Taka Sawazaki, Yusuke Shimizu, Yu Nemoto, Atsuhiko Taniguchi, Shuta Ozawa, Youhei Sohma, Motomu Kanai and Taisuke Tomita, “Photo-oxygenation inhibits tau amyloid formation,” Chemical Communications: 2019年4月26日, doi:10.1039/c9cc01728c.

論文へのリンク (掲載誌)

医療・健康
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