2019-07-19 科学技術振興機構,名古屋大学
ポイント
- ベンゼンが連なったリングに結び目や絡み目を作る新しい合成法を開発した。
- リング同士が鎖のように連結して絡み目をもった「オールベンゼンカテナン」と、結び目をもつリング「オールベンゼンノット」を世界で初めて合成し、構造を決定した。
- 複雑な幾何学構造をもつナノカーボンを設計・合成するための大きな一歩となる。
JST 戦略的創造研究推進事業において、ERATO 伊丹分子ナノカーボンプロジェクトの伊丹 健一郎 研究総括(名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM) 拠点長/教授)、瀬川 泰知 化学合成グループリーダー/研究総括補佐(名古屋大学 大学院理学研究科 特任准教授)、桑山 元伸 技術員らの研究グループは、炭素の絡み目「オールベンゼンカテナン」と、炭素の結び目「オールベンゼンノット」の世界初の合成に成功しました。
グラフェンやカーボンナノチューブなどナノメートルサイズの周期性をもつ炭素物質「ナノカーボン」を精密に設計して合成する方法は材料科学分野で強く求められています。これを達成するために、有機合成化学の手法を用いてナノカーボンの部分構造となる分子を合成する「分子ナノカーボン科学」が近年盛んに研究されています。しかし、これまでに合成された分子ナノカーボンは、ベンゼン注1)が連なったオールベンゼンリングなど、幾何学的に単純な構造でした。理論化学的に予測されている複雑な幾何学構造(トポロジー注2))をもつ未踏のナノカーボンを合成するには、分子ナノカーボンにトポロジーを付与する新しい合成法が必須です。