2型糖尿病女性患者における低用量アスピリン療法の認知症予防効果を臨床試験で明らかに

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2019-12-05 兵庫医科大学,国立循環器病研究センター,奈良県立医科大学,熊本大学

2型糖尿病女性患者における低用量アスピリン療法の認知症予防効果を臨床試験で明らかに兵庫医科大学(兵庫県西宮市、学長・野口 光一) 臨床疫学 教授 森本(もりもと) 剛(たけし)および、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長・小川 久雄)理事長 小川(おがわ) 久(ひさ)雄(お)、奈良県立医科大学(奈良県橿原市、学長・細井 裕司)教授 斎藤(さいとう) 能彦(よしひこ)、熊本大学(熊本県熊本市、学長・原田 信志)准教授 副島(そえじま) 弘(ひろ)文(ふみ)らの共同研究グループは、脳卒中や心血管疾患の再発予防のために使用され、血液をサラサラにする作用がある「低用量アスピリン療法」が2型糖尿病患者において認知症予防の効果を有しているかを検証するために、臨床試験を延長して解析しました。その結果、低用量アスピリン療法が、2型糖尿病患者の女性の認知症発症リスクを低下させる可能性を明らかにしました。

本研究成果に関する論文は、日本時間 2019年12月5日(木)0:00(米国東部時間 12月4日(水)10:00)に、米国内分泌領域において最も権威のある 「Diabetes Care」の電子版に掲載されました。

ポイント
・糖尿病患者を対象にした低用量アスピリンの認知症予防に関する臨床試験は初めて
・2型糖尿病患者の女性が低用量アスピリンを長期間服用すると認知症発症リスクが低下した
・低用量アスピリンを認知症予防薬として、今後利用できる可能性ある

【論文情報】

・掲載誌:
「Diabetes Care」 4th, December, 2019電子版

・論文タイトル:
「Sex difference in effects of low-dose aspirin on prevention of dementia in patients with type 2 diabetes mellitus: A long-term follow-up study of a randomized clinical trial」

・著者:
松本 知沙(前・兵庫医科大学 / 現・東京医科大学)、小川 久雄(国立循環器病研究センター)、斎藤 能彦、岡田 定規(奈良県立医科大学)、副島 弘文(熊本大学)、作間 未織(兵庫医科大学)、桝田 出(武田病院 健診センター)、中山 雅文(中山内科)、土肥 直文(奈良県西和医療センター)、陣内 秀昭(陣内病院)、脇 昌子(静岡市立静岡病院)、森本 剛(兵庫医科大学・論文責任者)等

日本における認知症有病者は、2012年の時点で462万人と年々増加傾向にあり、認知症の発症遅延や発症リスクの低減が重要となっています。特に、糖尿病を持病として持つ高齢者の場合は、高血糖の状態が続くことで認知機能が低下しやすく、アルツハイマー型認知症には約1.5倍、脳血管性認知症には約2.5倍なりやすいという報告もあり、今回、糖尿病と認知症発症の関連に着目しました。

【研究の方法】

JPAD研究(※1)に参加し、本研究に同意した日本人2型糖尿病患者2,536人を対象に、ランダムに「低用量アスピリン」を服用するグループ1,259人と「低用量アスピリン」を服用しないグループ1,277人に分けて2002年~2017年の約15年間で認知症発症の有無について追跡を行いました。

(※1)日本全国163施設と協力して2002年から開始した「日本人2型糖尿病患者における低用量アスピリン療法の心血管疾患一次予防」の臨床試験

【研究の結果】

対象者2,536人のうち、128人が認知症を発症しました。発症率について、男女差について分析を進めたところ、低用量アスピリン(81-100mg/日)の服用の有無で男性患者の認知症発症のリスクに差は見られませんでしたが、低用量アスピリンを服用し続けた女性患者については、認知症発症のリスクが42%低下したことが明らかになりました。
本研究では、女性にのみ効果が認められましたが、今後研究を進めて、低用量アスピリンの認知症予防効果を解明していくことで、将来的に低用量アスピリンが認知症予防薬として活用されることが期待されます。

医療・健康
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