幹細胞ラベリング用超低毒性量子ドット「Fluclair(TM)」試薬の開発

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2018-03-19 名古屋大学,日本医療研究開発機構

概要

名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻の 馬場 嘉信 教授、湯川 博 特任講師、同研究科応用物質化学専攻の 鳥本 司 教授、同大学院医学系研究科医療技術学専攻の 石川 哲也 教授の研究グループらが、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援※1の下、4K、8Kディスプレイや太陽電池に応用されている最先端量子ドット技術を駆使して開発したiPS細胞等の幹細胞の高感度イメージングが可能な量子ドット※2が、株式会社村田製作所の開発・製造ならびに、富士フイルムグループ和光純薬工業株式会社との協業にて、幹細胞ラベリング用超低毒性量子ドット「FluclairTM」試薬として商品化されました。
今回、商品化される量子ドット「FluclairTM」は、カドミウム等の毒性成分を含まないため、従来の量子ドットと比較して細胞毒性が大きく低減され、従来では困難であった強い蛍光強度を有する量子ドットの高濃度での使用を可能にしています。また、発光する波長ごとに「Green」、「Yellow」、「Red」の3種類をラインナップし、ユーザーが保有するイメージング機器や他の蛍光試薬の使用に応じて、最適な蛍光波長を選択頂けるようになっています。
本試薬は量子ドットのバイオ応用にスムーズに展開できるように設計されているため、これまで量子ドットの使用経験が乏しかった研究者にも非常に簡便に利用頂けます。本試薬の商品化により、多くの幹細胞のイメージングが求められる基礎試験に利用されることで、今後の再生医療の実現・加速への貢献が期待されると同時に、他の細胞治療研究や分子イメージング研究にも将来的に応用される可能性も期待されます。
※1 再生医療実現拠点ネットワークプログラム 技術開発個別課題 「iPS細胞分化・がん化の量子スイッチングin vivo Theranostics」 による成果。
※2 Scientific Reports, 2017, 7, 40047に掲載。

開発内容

本製品は、幹細胞などのラベリングに使用できる超低毒性量子ドット試薬です。量子ドットは、従来の蛍光色素や蛍光タンパク質よりも高輝度で耐光性に優れた蛍光物質です。
Fluclair™は、コア領域にカドミウムを含まないために、これまでのカドミウムを含む量子ドットと比較して、極めて細胞毒性が低いのが特徴です。そのため、細胞内イメージングやFluclair™を導入した細胞の移植後の生体内イメージングを容易に行うことができます。
図1. FluclairTMGreen, Yellow, Redのリン酸
図1.FluclairTMGreen, Yellow, Redのリン酸緩衝液中における蛍光写真

使用例

Fluclair™ Yellowを、膜透過性ペプチド(オクタアルギニン)を用いて脂肪組織由来幹細胞内に導入し、蛍光顕微鏡を用いて、脂肪組織由来幹細胞に導入されたFluclair™ Yellowを観察した。
図2.FluclairTM Yellowを導入した脂肪組織由来幹細胞画像
図2. FluclairTM Yellowを導入した脂肪組織由来幹細胞画像

商品項目

図3

用語解説
1.量子ドット
半導体や金属などの結晶サイズが直径20nm以下のナノ材料である。この大きさになると電子が限られた領域に閉じ込められた状態になることにより量子サイズ効果を示すようになる。この効果により、高量子収率、高輝度、高安定性、蛍光色制御の容易性といった蛍光特性を有する。
2.幹細胞
自己複製能と多分化能の2つの能力を有する細胞として定義されている。幹細胞には、我々の体に備わる体性幹細胞(骨髄、脂肪由来幹細胞など)や胚性幹細胞(iPS細胞、ES細胞など)があり、対象とする組織・臓器や疾患の種類によって、それぞれ使い分けられている。
お問い合わせ
研究に関すること

湯川 博(ユカワ ヒロシ)特任講師
名古屋大学 大学院工学研究科
名古屋大学 先端ナノバイオデバイス研究センター
馬場 嘉信(ババ ヨシノブ)教授
名古屋大学 大学院工学研究科
名古屋大学 先端ナノバイオデバイス研究センター

報道担当

名古屋大学総務部総務課広報室

AMED 再生医療実現拠点ネットワークプログラムに関すること

日本医療研究開発機構 戦略推進部 再生医療研究課

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