2020-05-11 京都大学
井垣達吏 生命科学研究科教授、佐奈喜祐哉 同博士課程学生(現・仏・キュリー研究所)らの研究グループは、ショウジョウバエを用いて細胞競合のメカニズムを探索する過程で、高インスリン血症のハエでは細胞競合がうまく働かず、がん化が起こることを発見しました。
具体的には、がんのもとになる異常細胞(極性が崩壊した細胞)は、通常は周りの正常細胞と比べてタンパク質合成能力が劣っており、これにより細胞競合が起こって正常細胞により除去されます。しかし、高インスリン血症の状態では異常細胞のタンパク質合成能力が正常細胞よりも高くなり、正常細胞によって排除されなくなって腫瘍化することがわかりました。
そして、高インスリン血症により細胞競合が破綻したハエに糖尿病治療薬「メトホルミン」を投与すると、細胞競合が復活して異常細胞が排除され、がん化が抑制されることがわかりました。
今後、今回見出された細胞競合の制御機構を標的とした、新たながん予防や治療法の開発が期待されます。
本研究成果は、2020年5月8日に、国際学術誌「Developmental Cell」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の概要図
書誌情報
産経新聞(5月8日夕刊 6面)および読売新聞(5月8日夕刊 8面)に掲載されました。