オキシトシンの変動には大きな個人差がある
2020-06-04 京都大学
明和政子 教育学研究科教授、松永倫子 同博士後期課程学生、菊水健史 麻布大学教授らの研究グループは、初産で生後2〜9ヶ月児を育児中の母親を対象に、「母乳授乳する」あるいは「乳児を抱く」行為の前後で「オキシトシンホルモン(以下、オキシトシン)」を計測し、他者の表情の感じ方に変化が生じるか、そこにはどの程度の個人差が認められるかを調べた結果、母乳授乳の継続期間によらず、オキシトシンの変動には大きな個人差が認めらることを明らかにしました。
他方、授乳後にオキシトシンを高めた母親ほど、快表情(うれしい)を知覚する正確性が高まり、不快表情(怒り)を知覚する正確性が低くなることを明らかにしました。
母乳授乳は、養育者のストレスを軽減したり、乳児に対する快の感情を高めるといわれています。オキシトシンは本来、母乳を放出させる役割をもっていますが、最近、対人関係を円滑に進めたり、記憶・学習能力を高める働きにも注目が集まっています。本研究は、オキシトシン値の個人差を考慮して、対人心理・行動特性に影響する可能性を初めて示しました。
本研究成果は、2020年6月3日に、国際学術誌「Biology Letters」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究のイメージ図
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1098/rsbl.2020.0139
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/251175
Michiko Matsunaga, Takefumi Kikusui, Kazutaka Mogi, Miho Nagasawa, Rumi Ooyama and Masako Myowa (2020). Breastfeeding dynamically changes endogenous oxytocin levels and emotion recognition in mothers. Biology Letters, 16(6):20200139