2020-07-20 京都大学
趙明明 iPS細胞研究所研究員、櫻井英俊 同准教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から筋再生能のある骨格筋幹細胞を誘導する方法を確立しました。また、この細胞を難病「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」のモデルマウスに移植したところ、筋張力の改善効果があることがわかりました。
DMDは、筋肉にあるジストロフィンというタンパク質が欠損することによって発症する進行性の重篤な筋疾患で、根本的な治療法は開発されていません。
本研究グループは、胎児の発生過程をモニターすることで、ヒトiPS細胞から効率的に筋肉のもととなる骨格筋前駆細胞を効率よく得られる方法を開発しました。そして、DMDを再現したモデルマウスにこの骨格筋前駆細胞を約30万個注射したところ、1匹あたり100本以上のジストロフィン陽性筋線維が再生されるのが確認されました。また、運動機能を評価するために、DMDモデルマウスの右ふくらはぎの筋肉に骨格筋前駆細胞を移植したところ、筋力の改善効果が示されました。
本研究により、将来の細胞移植療法の実現に貢献できると期待されます。
本研究成果は、2020年7月3日に、国際学術誌「Stem Cell Reports」に掲載されました。
図:細胞移植後のDMDモデルマウスの筋組織