2020-08-25 京都大学
酒井章子 生態学研究センター教授、近藤倫生 東北大学教授らの研究グループは、需要―供給バランスに依存する花と昆虫の取引のネットワークを解明しました。
ハナバチなどの昆虫は、花蜜を対価に、花から花へと花粉を運ぶ「送粉サービス」を提供します。提供するサービスの質は、昆虫によってさまざまです。結実には同じ種類の植物の花粉が必要なため、特定の植物種だけを相手にする「専門店」の昆虫の方が、質の高いサービスを提供します。昆虫にとっても、自分だけを利用してくれる植物は確実に蜜を得られる「お得意さん」です。しかし実際の生態系では、専門店とお得意さんの関係は多くはありません。
本研究グループは、その理由をゲーム理論にもとづいて解析し、専門店とお得意さんの関係はサービスの需要と供給が釣り合っているときにしか維持できないことを明らかにしました。どちらかが多すぎると、植物同士、昆虫同士の競争が、効率のよい関係を壊してしまうのです。この研究では、この現象を「送粉のジレンマ」と名付けました。生態系では、いろいろな生物が複雑な取引のネットワークを作っていますが、今後それらのネットワークについて、需要と供給のバランスという新しい視点での研究が進むことが期待されます。
本研究成果は、2020年8月20日に、国際学術誌「Ecology Letters」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の概要図