膀胱がんとMOCAのばく露に関する医学的知見を公表します

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労災請求を受け、疫学調査結果などを分析・検討した報告書を取りまとめました

2020-12-22 厚生労働省

厚生労働省の「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」(座長:柳澤裕之 東京慈恵会医科大学 副学長)は、このたび、膀胱がんと「3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン」(以下「MOCA」)との関連について、現時点での医学的知見を報告書として取りまとめましたので、公表します
※MOCAは、防水材や床材などに利用されるウレタン樹脂の硬化剤

今回の報告書は、国内の化成品などを製造する工場で、MOCAを取り扱う業務に従事していた労働者に膀胱がんが発症し、複数の労災請求があったことを受け、業務が原因かどうかを判断するために、国際的な報告や疫学調査結果などを分析・検討してまとめたものです。
この報告書を受けて厚生労働省は、この検討の契機となった工場を管轄する労働局に対し、労災請求事案の決定を行うよう指示します。また、MOCAを取り扱う事業場に対する労災請求手続きなどの周知を実施していきます。

■報告書の結論

MOCAのばく露と膀胱がんの発症リスクとの関連性について、
・ばく露業務に5年以上従事した労働者に発症した膀胱がんは、潜伏期間が10年以上認められる場合、その業務が有力な原因となって発症した可能性が高いものと考える。
・ばく露業務への従事期間が5年または潜伏期間が10年に満たない場合は、作業内容、ばく露状況、発症時の年齢、既往歴の有無、喫煙の有無などを勘案して、業務と膀胱がんとの関連性を検討する。

【添付資料】

添付資料1 検討会報告書の概要
MOCA について「ヒトに対して発がん性がある」と評価した国際がん研究機関の「IARCモノグラフ(2010 年)」のほか、MOCA と膀胱がんの関係について調査・研究した 24 文献を Pub Med(米国国立医学図書館が運営する文献検索システム)などにより収集し、レビューを行った。

1 MOCA のばく露期間・潜伏期間と膀胱がんの発症リスク

(1)ばく露期間について
MOCA 以外の膀胱がん発症が疑われる化学物質との混合ばく露の事例では、5年未満で膀胱がんを発症しているものが見られるが、それ以外では5年以上のMOCA のばく露で膀胱がんを発症しており、少なくとも5年程度のばく露で膀胱がんを発症する可能性があると考えられる。
(2)潜伏期間について
上記の混合ばく露の事例では、10 年未満の潜伏期間で膀胱がんを発症しているものも見られるが、それ以外では 10 年以上の潜伏期間で発症しており、少なくともMOCAのばく露開始から10年以上経過した後に膀胱がんを発症する可能性があると考えられる。

2 検討会の結論

  • MOCA のばく露業務に5年以上従事した労働者に発症した膀胱がんについて、潜伏期間が 10 年以上認められる場合は、業務が相対的に有力な原因となって発症した可能性が高いものと考える。
  •  MOCA のばく露作業への従事期間が5年に満たない場合、あるいは、MOCA のばく露開始後膀胱がん発症までの潜伏期間が 10 年に満たない場合は、作業内容、ばく露状況、発症時の年齢、既往歴の有無、喫煙の有無などを勘案して、業務と膀胱がんとの関連性を検討する。

労災請求事案の決定手続き等に関する今後の対応

  •  事業場を管轄する労働局に対し、検討結果報告書に基づき速やかに事務処理を行い、決定を行うよう指示。
  •  MOCA のばく露により膀胱がんを発症したとして労災請求がなされた事案について、今後も必要に応じて本検討会において業務と膀胱がんの関連性を検討。
  •  MOCA を取り扱う事業場に対する労災請求手続き等の周知を実施。
    (MOCA により膀胱がんを発症した労働者に関する労災請求権の消滅時効については、本日まで進行しない取扱いになる。)

詳しい資料は≫

【照会先】
労働基準局
補償課長        西村斗利
職業病認定対策室長   西岡邦昭
職業病認定対策室長補佐 中村昭彦

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