リキッドバイオプシーによる大腸がんの治癒率向上・個別化医療実現を目指した国際共同第III相医師主導治験を開始

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民間企業からの投資を活用した新たな大規模医師主導治験の枠組みを構築

2020-12-21 国立がん研究センター,一般社団法人Cirkit-J

発表のポイント

  • 見えないがん(術後微小残存病変*1)が判明した大腸がん患者さんを対象に、日本主導による国際共同第III相医師主導治験*2(ALTAIR試験)を開始しました。
  • 大腸がんの術後微小残存病変をターゲットとした治験は世界初です。
  • 本試験は、外科治療が行われる大腸がん患者さんに対し、リキッドバイオプシー*3によるがん個別化医療の実現を目指すプロジェクト「CIRCULATE-Japan」の傘下で行われる3つ目の臨床試験で、血中循環腫瘍DNA*4陽性患者さんに薬物療法の有用性の検証を行います。
  • 今回、長期間の大規模医師主導治験の実施および運営を可能にする新たな枠組みを構築しました。
  • 本試験から得られたがんゲノム情報および臨床情報のビッグデータを活用し、がんの遺伝子異常に基づいた個別化医療の実現と患者さん一人ひとりに応じた最適な医療の提供を目指します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区、略称:国がん)東病院(院長:大津 敦、千葉県柏市、以下東病院)と一般社団法人CirKit-J(理事長:茂呂 眞、東京都千代田区、略称:C-J、以下CirKit-J)は、見えないがん(術後微小残存病変)が判明した大腸がん患者さんを対象とした、日本主導による世界初の国際共同第III相医師主導治験(ALTAIR試験)を開始しました。
本試験は、外科治療が行われる大腸がん患者さんに対し、リキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指すプロジェクト「CIRCULATE-Japan(サーキュレートジャパン)」の傘下で行われる3つ目の臨床試験です。消化器がんの医師主導治験では過去に類を見ない、国内外37施設(うち海外1施設)で大規模に実施します。CIRCULATE-Japanにおけるリキッドバイオプシーによるモニタリング検査で「血中循環腫瘍DNA (ctDNA)陽性」と判定された方を対象に、薬物療法(経口の新規ヌクレオシド系抗悪性腫瘍薬FTD/TPI療法*5)の有用性を検証します。大腸がんの術後微小残存病変をターゲットとした治験の実施は世界で初めてです。
また、製薬企業からの資金に加え、民間企業からの投資資金を活用する新たな医師主導治験の枠組みを構築しました。従来、治験費用は製薬企業のみが負担することが通例でしたが、製薬企業以外の民間企業からの出資を募ることで、大規模な国際共同医師主導治験の実施が可能となりました。今後も、同様の枠組みを活用して、世界初となる画期的な治療法を日本から継続的に発信していくことが期待されます。さらに本試験から得られたがんゲノム情報および臨床情報のビッグデータを活用し、がんの遺伝子異常に基づいた個別化医療の実現と患者さん一人ひとりに応じた最適な医療の提供を目指します。

本試験の詳細

近年、最先端のリキッドバイオプシー解析により、術後微小残存病変の検出が可能となり、より強度の高い薬物療法を術後早期に加えることで治癒率が向上することが期待されています。しかしながら現在、血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後の大腸がん患者さんに対して、再発を防ぐ有効な治療は確立されていません。本試験では、標準治療である経過観察(プラセボ)と比較し、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(FTD/TPI、製品名ロンサーフ®)による先制治療*6を行うことの有用性を検証します。

試験名

血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後結腸・直腸がん患者を対象としたFTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第III相試験(ALTAIR試験)

研究代表者

谷口 浩也

対象

CIRCULATE-Japanに参加している大腸がん患者さんで、血中循環腫瘍DNA陽性が確認された患者さん

治験予定期間と登録人数

2020年6月から開始。国内外37施設(うち海外1施設)で、240例の患者さん

その他の詳細は、こちらよりご確認ください。なお、本試験に関するお問い合わせは、下記の「医師主導治験に関するお問い合わせ」までご連絡ください。

本試験の特徴

患者さんを治癒(完治)に導く術後補助薬物療法(外科治療後の再発を予防する薬物療法)の臨床開発は、がん薬物療法の臨床開発として最優先されるべき課題の一つです。しかし、術後補助化学療法の臨床開発は、大規模かつ長期間の臨床試験での検証と、それに伴う多くの資金が必要となります。 この課題を解消するため、CirKit-Jは大腸がん治療薬の医師主導治験推進を目的とした株式会社アルファーA(社長:茂呂 眞、東京都千代田区、略称:αA)を設立し、今回の取り組みに賛同した医薬品開発業務受託機関(CRO)*7やソフトバンク株式会社、大鵬薬品工業株式会社の支援のもと本医師主導治験をサポートします。民間企業などの幅広い支援を活用するこの新たな枠組みの構築により長期間の大規模医師主導治験の実施および運営が可能となり、日本の医師が主導する臨床開発が加速することが期待されます。

CIRCULATE-Japanについて

従来、大腸がんの根治手術後には、病期(ステージ)から推定される再発リスクに応じて、再発を予防する目的で術後補助化学療法が行われてきました。しかし患者さんによって薬の効果や副作用に違いがあり、特に末梢神経障害(手足のしびれ)が後遺症として残ることが課題となっています。CIRCULATE-Japanでは最新のリキッドバイオプシー解析技術を用いて、患者さん毎により高精度に術後の再発リスクを推定し、より適切な医療を提供することを目的としています。
現在、国内外約150施設(うち海外1施設を含む)が参加する、大規模な医師主導国際共同臨床試験(GALAXY試験、VEGA試験、ALTAIR試験)を実施しています。
◆参考プレスリリース
2020年6月10日
リキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指す新プロジェクト「CIRCULATE-Japan」始動-見えないがんを対象にした世界最大規模の医師主導国際共同臨床試験を開始-

一般社団法人 Cirkit-Jについて

日本・アジアからの臨床開発を恒常的に強化・維持するために、開発リスクの高い臨床開発を低コストで行う仕組みの構築を目的として設立された社団法人です。臨床研究に投資の枠組みを構築し、投資で得た収益を更なる研究に再投資する循環をさせることを目標としています。また、臨床研究で得たデータを共通化してデータベースとして蓄積し後の研究に活かすことも計画しています。
https://www.c-j.or.jp/

用語解説

*1 術後微小残存病変
患者さんの体内にまだ残っているだろうと想定されるがん病変(細胞)のこと。現在の画像診断技術や腫瘍マーカー検査では無再発と判断されることも多い。

*2 医師主導治験
医療上必要とされる治療を適切に普及させるために、医師自らが企画・立案し、治験の準備から管理を医師自ら行う試験。

*3 リキッドバイオプシー
患者さんの血液を用いてがんのゲノム異常を検出する検査。CIRCULATE-Japanでは、米国Natera社が開発した超高感度遺伝子解析技術「Signatera」アッセイを使用。患者さんの腫瘍の遺伝子異常をもとに、約16遺伝子を標的とする患者さんオリジナルの検査試薬を作製し、これを用いて、血液中にがん由来のDNAが含まれているかを次世代シークエンサー法により解析する。血液検査で繰り返し測定可能であるため、身体に負担が少なく、がんの再発をより早期に発見できることが期待される。

*4 血中循環腫瘍 DNA(ctDNA)
血液中にごく微量に存在するがん由来の DNA。

*5 FTD/TPI療法
DNAに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮するFTDと、体内でFTDの分解を阻害するTPIを配合した、新規作用機序を有する経口のヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤。治療歴を有する切除不能大腸がんと胃がん患者さんを対象に、欧米・アジアをはじめ世界で広く承認されている。

*6 先制治療
病気の発症前にそれを予測し、あらかじめ治療を行うことにより病気の発症を防止もしくは遅らせるという新しい概念の治療。

*7 医薬品開発業務受託機関(CRO)
製薬会社等が医薬品開発の為に行う治験業務(臨床開発)を受託・代行する企業のこと。CROはContract Research Organizationの略。

問い合わせ先

医師主導治験に関する問い合わせ
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 臨床研究支援部門
担当者:福谷 美紀、福井 誠

取材・報道関係からのお問い合わせ
国立研究開発法人国立がん研究センター

一般社団法人CirKit-J
担当者:中島 佐依子

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