2021-01-08 京都大学
月浦崇 人間・環境学研究科教授らは、勝見祐太 米国ノースイースタン大学博士研究員、 Florin Dolcos イリノイ大学准教授らと共同で、幸福感と共感性を関連付ける安静時における脳機能ネットワークを解明しました。
主観的幸福感とは、日々の生活の情動的体験や満足感の主観的評価のことを指します。これまでに、主観的幸福感は他者への共感性に関連することが報告されてきましたが、この相関関係の基盤となる脳機能については明らかにされていませんでした。
本研究グループは、日本人の若年者を対象に、安静時における脳機能ネットワークの結合性を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて計測し、質問紙によって得られた主観的幸福感や共感性の指標との相関を解析しました。その結果、主観的幸福感と共感性の一要素である個人的苦痛(他者の苦痛に対して動揺するなどの自己志向性の感情反応を示す度合い)は互いに負の相関を示しており、さらにそれぞれが前頭前皮質を中心とする広汎な脳領域間の結合性に、対照的に関連することが明らかになりました。特に、主観的幸福感と個人的苦痛の相関は、デフォルトモードネットワークや前頭頭頂ネットワークをはじめとした脳の大規模ネットワークと前頭前皮質との結合における個人差によって媒介されることが確認されました。
この結果は、共感性に関するネガティブな自己志向が低い人ほど主観的幸福感が高く、その基盤として安静時の脳内における機能的結合性が重要であることを示唆しています。
本研究成果は、2020年12月15日に、国際学術誌「NeuroImage」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:月浦崇