2021-01-15 京都大学
金子博人 化学研究所博士課程学生、緒方博之 同教授らの研究グループは、海洋の各海域における炭素の鉛直輸送効率を、ウイルスの種組成から予測できることを明らかにしました。
植物プランクトンが光合成により固定した炭素の一部は、凝集粒子の形で深層へと鉛直輸送されます。この炭素の鉛直輸送プロセスを生物炭素ポンプと呼びます。近年、海洋に存在するウイルスが生物炭素ポンプを制御している可能性が注目されています(生物炭素ポンプの「ウイルス制御説」)。「ウイルス制御説」は、これまで限れた海域や実験室で研究されてきました。しかし、ウイルスによる制御が全球規模で機能しているかは定かでありません。本研究グループは、国際海洋探査Tara Oceansが産出したウイルスの種組成データに基づき、生物炭素ポンプの効率を予測することが可能であることを確認しました。さらに、生物炭素ポンプの効率と強く関係するウイルスは生態学的に重要なプランクトンに感染している証拠を得ました。本研究成果は、ウイルスが物質循環や地球温暖化の制御にも関係している可能性を提示しています。
本研究成果は、2020年12月28日に、国際学術誌「iScience」に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:緒方博之