樹木の実生を用いた大規模な野外生態系実験で実証
2021-02-22 京都大学
門脇浩明 フィールド科学教育研究センター特定助教(現・白眉センター特定准教授)、東樹宏和 生態学研究センター准教授らの研究グループは、大規模野外操作実験を通じて植食性昆虫と土壌微生物が樹木の多様性の維持や種の移り変わり(遷移)のカギを握る重要な要因であることを明らかにしました。
森林は多様な種類の樹木が共存することで成り立っています。その多様性を維持する仕組みとして、植食性昆虫や土壌微生物が特定の樹種だけが増加するのを制御しているのではないかと考えられてきました。しかし、森林は非常に複雑なシステムであるため、実際に植食性昆虫や土壌微生物がどのように働き、樹木群集を形作っているのかは明らかされていませんでした。
本研究ではそれを検証するため、樹木がその定着場所の環境や生物相(植食性昆虫や土壌微生物)を変化させ、更にその変化が今後、周囲に定着する実生(芽生え)の成長や生存にまで波及する過程(「生態的フィードバック」現象と呼びます)を実験的に再現しました。具体的には、ミニ森林生態系を土から作り、実生を移植することで成長を追跡し、同時に、節足動物(昆虫・クモ類)と土壌菌の網羅的な大規模野外調査を行いました。地上および地下における樹木と様々な生物との相互作用のネットワークが実生の定着や成長に及ぼす影響を生態系レベルで検出することに成功しました。
本研究成果は、2021年2月18日に、国際学術誌「Oecologia」のオンライン版に掲載されました。
図:京都大学理学部植物園の実験サイトで観察された動物(植食性昆虫に加え、それらを餌とする捕食性の種も見られた)
研究者情報
研究者名:門脇浩明
研究者名:東樹宏和