新たな除草剤候補化合物クマモナミドを発見

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2021-03-23 熊本大学,微生物化学研究所,科学技術振興機構

ポイント
  • 放線菌に由来する天然化合物クマモナミドを発見し、全合成法を確立してさまざまな誘導体を合成し、強力な除草活性を持つ化合物KANDを開発しました。
  • クマモナミドおよびKANDは植物細胞に必要な細胞内構造物である微小管を壊す活性を持ち、既知の除草剤とは異なる作用機序を持つことを発見しました。
  • クマモナミドおよびKANDは雑草の防除に優れる一方でヒトの細胞や土壌中の微生物への毒性が少ないので人や環境に優しく、SDGsに貢献する除草剤の開発につながる可能性があります。

熊本大学 国際先端科学技術研究機構の石田 喬志 助教、檜垣 匠 准教授、熊本大学 先端科学研究部の谷 時雄 教授、澤 進一郎 教授、石川 勇人 教授(現所属・千葉大学 大学院薬学研究院)、微生物化学研究所の五十嵐 雅之 第2生物活性部部長らによる研究グループは、農薬開発に役立つ新たな天然化合物として、土壌微生物である放線菌の培養上清からN-アルコキシピロール化合物「クマモナミド」を発見しました。さらに、クマモナミドに分子構造の近い化合物を多数合成し、その中からクマモナミック酸が植物の成長を抑える活性を持つことを見いだしました。このクマモナミック酸を元にさらに強力な除草活性を持つ化合物の開発を進め、KANDという強力な成長阻害効果を持つ化合物の開発に成功しました。

KANDは植物細胞に必要な細胞内構造物である微小管を壊し、植物細胞の細胞分裂を阻害して植物の成長を抑制する作用を示します。KANDの植物成長抑制作用はこれまでに報告されている除草剤とは異なるものであり、新たな除草剤開発に向けたリード化合物となり得ます。

クマモナミドやKANDは多様な植物種に対して成長阻害効果を示す一方で、ヒトの培養細胞や細菌に対する顕著な毒性は示しませんでした。このため、クマモナミドは野外において除草剤として実用化された際に、ヒトにも環境にも負荷を与えないという点で大きなメリットにつながる可能性があります。

本研究成果は、2021年3月23日(英国時間)に科学雑誌「Scientific reports」に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) A-STEP機能検証フェーズ試験研究タイプ「細菌由来新規アルカロイドを先導物質とした植物成長抑制剤の開発」の支援を受けて実施したものです。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Discovery, characterization and functional improvement of kumamonamide as a novel plant growth inhibitor that disturbs plant microtubules”
DOI:10.1038/s41598-021-85501-1
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
石田 喬志(イシダ タカシ)
熊本大学 国際先端科学技術研究機構

<JST事業に関すること>
佐藤 喜一(サトウ ヨシカズ)
科学技術振興機構 産学連携展開部 地域イノベーショングループ

<報道担当>
科学技術振興機構 広報課

有機化学・薬学
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