孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病における新規診断基準の提唱

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2021-05-06 長崎大学,日本医療研究開発機構

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 保健科学分野 佐藤克也教授と同大学新興感染症病態制御学専攻 感染分子解析学分野 西田教行教授はアメリカ・イギリス・ドイツ・イタリアとの共同研究にて孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)における新規診断基準を提唱しました。

本研究成果は、米国科学誌『Lancet Neurology』(2021年3月1日付)の電子版に掲載されました。

研究背景

プリオン病の多くを占める孤発性CJDは、異常に折りたたまれたプリオンタンパク質1)によって引き起こされる致命的な神経変性疾患で、現在有効な治療法はありません。孤発性CJDでは発症から3ヶ月程度で急速に悪化し無動無言に至るために、発症後できる限り早期の診断が必須です。臨床診断は特徴的な神経・精神症状、髄液中14-3-3蛋白、MRI2)、および脳波検査を組み合わせて行いますが、正確な診断が困難な場合があります。また、髄液中の総タウ蛋白の上昇などのバイオマーカーは孤発性CJDの診断の参考になる一方で、バイオマーカーによっては、診断におけるプロセスを混乱させるという報告もあります。さらに近年は、発症後の超早期から投与することにより治療効果が期待される薬剤の報告もあるため、発症早期でもより有効な、新たな診断基準の構築が望まれています。

研究体制

本研究は長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 佐藤克也教授・西田教行教授、国立精神・神経医療研究センター 水澤英洋理事・塚本忠 医療連携福祉相談室医長・臨床検査部 高尾昌樹部長、金沢大学医薬保健研究域医学系 山田正仁教授・浜口毅准教授、岩手医科大学医歯薬総合研究所超高磁場MRI診断・病態研究部門 佐々木真理教授、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野 三條伸夫プロジェクト教授、福岡大学医学部医学科 坪井義夫教授、愛知医科大学加齢医科学研究所 岩崎靖教授、新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター遺伝子機能解析学分野 春日健作助教、横浜市立大学附属市民総合医療センター神経内科 岸田日帯講師、山梨大学大学院総合研究部医学域神経内科学講座 瀧山嘉久教授、国際医療福祉大学・福岡保健医療学 医学検査学科 雪竹基弘特任准教授、国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター神経内科・脳神経内科 高嶋浩嗣医師・寺田達弘医師、徳島大学病院 藤田浩司特任講師により実施されました。

本研究の成果

現在まで孤発性CJDの補助診断法として頭部MRI画像検査、髄液バイオマーカー検査、脳波上の周期性同期性放電の有用性が明らかになっており、世界保健機関(WHO)の診断基準等に利用されています。一方、2011年長崎大学で開発されたRT-QuIC法3)などの疾患特異的タンパク質凝集および増幅アッセイの開発は、孤発性CJDの生前に診断可能な方法として大きな進歩を遂げており、プリオン病の早期診断において、その有用性が注目されています。

本研究では、孤発性CJDの生前診断に有用な補助診断法を詳細に検討し、髄液中又は他の組織にてRT-QUIC法にて陽性であることを加えた、孤発性CJDの新たな診断基準を提唱しました。

プリオン病(孤発性CJD)新規診断基準(案)

Definite(確定):進行性認知機能障害を呈し、脳組織においてCJDに特徴的な病理所見を証明する、又はウェスタンブロット法か免疫組織学的検査にて異常プリオン蛋白が検出されたもの。

Probable(可能性高い):病理所見・異常プリオン蛋白の証明は得られていないが、

  • Ⅰ+IIの2項目を満たし、脳波上の周期性同期性放電を認める。
  • Ⅰ+IIの2項目を満たし、典型的なMRI所見を認める。
  • Ⅰ+IIの2項目を満たし、髄液中14-3-3 蛋白陽性を認める。
  • 進行性認知機能障害を呈し、髄液中又は他の組織にてRT-QUIC法にて陽性を認める。

*その際に他の疾患を除外すること。
Possible(可能性あり)
:Ⅰ+IIの2項目を満たし、全臨床経過が2年未満であるもの。

主項目

Ⅰ:進行性認知機能障害
Ⅱ:A.ミオクローヌス
B.視覚異常又は小脳失調
C.錐体路徴候か錐体外路徴候
D.無動無言

今後の展開

本研究成果により、発症早期に有用で、精度の高いプリオン病(孤発性CJD)の新規診断基準が構築されることで、早期の臨床診断の確定、発症早期の治療法開発につながることが期待されます。

論文情報

これらの研究成果は、2021年3月1日 Lancet Neurology誌に掲載されました。

タイトル
Biomarkers and diagnostic guidelines for sporadic Creutzfeldt-Jakob disease
著者
Peter Hermann, Brian Appleby, Jean-Philippe Brandel, Byron Caughey, Steven Collins, Michael D Geschwind, Alison Green, Stephane Haïk, Gabor G Kovacs, Anna Ladogana, Franc Llorens, Simon Mead, Noriyuki Nishida, Suvankar Pal, Piero Parchi, Maurizio Pocchiari, Katsuya Satoh, Gianluigi Zanusso, Inga Zerr
DOI番号
10.1016/S1474-4422(20)30477-4.
補足説明
1)プリオンタンパク質
プリオン病の病原体といわれるプリオン蛋白質には,実は正常のもの(健常の人も持っている蛋白質)と、病原性、感染性を持った異常型プリオン蛋白質がある。プリオン病の主体は異常型プリオン蛋白質である。
2)MRI拡散強調画像
MRIの撮影法の1つ。水分子の拡散運動を画像化したもの。主に脳梗塞の早期発見やがんの診断に用いられている。
3)RT-QuIC法
Real-time quaking induced conversion法の略。いわゆる異常型プリオンタンパク質試験管内増幅法。振とう法にて髄液中に存在する異常型プリオン蛋白質を増幅し、検出する方法。
研究支援

本研究課題は平成30年度 難治性疾患実用化研究事業診療に直結するエビデンス創出研究『プリオン病の早期診断基準の作成を目指した新たなエビデンス創出とその検証に用いる遺伝性プリオン病未発症例の臨床調査と画像・生体材料の収集』の支援を受け実施されました。

お問い合わせ先

研究に関するお問い合わせ
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
佐藤 克也

AMED事業に関するお問い合わせ
日本医療研究開発機構(AMED)
ゲノム・データ基盤事業部医療技術研究開発課
難治性疾患実用化研究事業

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