皮膚疾患の病態再現を目指した表皮モデルを計算機上に構築

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数理モデリングを用いた新しい皮膚疾患治療方法への応用に期待

2021-06-24 北海道大学,中央大学,科学技術振興機構

皮膚疾患の病態再現を目指した表皮モデルを計算機上に構築

ポイント
  • 角化異常の病態を計算機上に再現することを可能とする表皮モデルの構築に成功。
  • 角層バリア機能の恒常性維持メカニズムを理論的に解明。
  • 医学・生命科学と協働した皮膚科学の理論研究の進展に期待。

北海道大学 電子科学研究所の長山 雅晴 教授、小林 康明 准教授、中央大学 理工学部の大野 航太 助教らの研究グループは、真皮の変形を考慮した3次元表皮構造を計算機上に再現する数理モデルの構築に成功しました。

皮膚の持つバリア機能は、表皮細胞が規則的に積み重なった表皮構造に起因し、特に角層バリア機能は、基底層から供給される表皮細胞が継続的に角質細胞へと分化することで動的に維持されています。この表皮の恒常性維持はさまざまな皮膚疾患によって破壊されることがあり、その影響は多くの場合に表皮だけでなく、真皮の形態変化を伴います。また老化による真皮の形態変化が表皮構造に影響を与えることも知られています。そこで表皮構造に真皮の形態がどのように影響するかを数理モデルにより予測することを試みました。同研究グループの構築した数理モデルは、安定した表皮の層構造を作り出すことができます。また、その表皮の恒常性維持は基底層からの細胞供給量に依存することを示しました。さらに、真皮の形態変化をモデル化することで、真皮の硬さが表皮構造や角層バリア機能にどのように影響するかを調べることができました。その結果、真皮を硬くすると表皮が薄くなり、角層バリア機能が低下することが分かりました。

さらに「魚の目(ウオノメ)」として知られている病態の形成を計算機上で再現できることを示しました。また、人のウオノメの病理検体データを解析した結果は、数理モデル上の仮定とシミュレーション結果を支持していることが分かりました。このことから数理モデルは、真皮の構造変化を伴うさまざまな皮膚疾患のシミュレーションへの応用が期待されます。

なお、本研究成果は、日本時間2021年6月24日(木)公開の「Scientific Reports」誌にオンライン掲載される予定です。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「現代の数理科学と連携するモデリング手法の構築」研究領域(研究総括:坪井 俊)における研究課題「数理モデリングを基盤とした数理皮膚科学の創設」(研究代表者:長山 雅晴、課題番号:JPMJCR15D2)、マルホ・高木皮膚科学振興財団、武田科学振興財団の支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“A computational model of the epidermis with the deformable dermis and its application to skin diseases”
DOI:10.1038/s41598-021-92540-1
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
長山 雅晴(ナガヤマ マサハル)
北海道大学 電子科学研究所 教授

大野 航太(オオノ コウタ)
中央大学 理工学部 ビジネスデータサイエンス学科 助教

<JST事業に関すること>
舘澤 博子(タテサワ ヒロコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ

<報道担当>
北海道大学 総務企画部 広報課
中央大学 広報室
科学技術振興機構 広報課

医療・健康
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