2021-09-09 京都大学
緑内障は日本の中途失明の原因第1位となっています。緑内障の確立された治療法は眼圧下降治療のみであり、手術方法には大きく分けて流出路再建術と濾過手術があります。流出路再建術としては主に線維柱帯切開術(線維柱帯の房水流出抵抗を減弱させる手術)が行われており、濾過手術に比べて低侵襲で術後合併症が少ないことが大きなメリットです。流出路再建術は近年ではminimally invasive glaucoma surgery(MIGS:低侵襲緑内障手術)と呼ばれるより小切開で低侵襲の手術が広く行われています。しかし、一部の症例では十分な眼圧下降効果が得られず、その原因の一つが線維柱帯より後方の房水流出抵抗にあると考えられますがそれを調べる方法はありませんでした。
以前、赤木忠道 医学研究科准教授(現・新潟大学准教授)、岡本洋子 同博士課程学生、辻川明孝 同教授らの研究グループは、非侵襲的に血流を描出可能な前眼部OCTアンギオグラフィー(OCTA)を用いた深層画像によって、線維柱帯より後方の房水流出に関わる強膜内静脈叢、房水静脈、上強膜静脈の少なくとも一部が描出できることを報告しました。今回、術前の前眼部OCTA画像とMIGSの術後成績との関連に着目しました。今まで、前眼部OCTA画像とMIGS術後成績との関連を調べた研究はありませんでした。
本研究グループは、線維柱切開術眼内法を施行した37例37眼のデータを解析し、術前の前眼部OCTA深層血流画像の血管密度が低いほど、手術成功となることが多く、また高い眼圧下降率が得られることを発見しました。
本研究成果は、2021年9月8日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:赤木忠道
研究者名:辻川明孝