2021-09-10 京都大学
山地の渓流は大雨の後に増水し植生に被害を与えます。しかし洪水に対する耐性をもつ植物(渓流沿い植物)にとっては、その被害にもあわず、競合相手もいないため生育に適した環境といえます。雨の多い沖縄島はとくに渓流沿い植物が豊富です。島の渓流には細長い葉で激流を受け流すキク科植物が分布しますが、これまでこの植物は本土に分布する種と同種と考えられてきました。
しかし、阪口翔太 地球環境学堂助教らの研究グループが遺伝分析を行った結果、島と本土の渓流種は直接の血縁関係になく、島の渓流種は沖縄の海岸に生える別種に近いことがわかりました。さらに島と本土の渓流種の形態は様々な点で異なり、花が咲く時期も別です。そのため沖縄島の渓流種を島に固有の新種(ヤンバルアオヤギバナ)として記載しました。ヤンバルアオヤギバナの祖先は幅広い葉を持ち、それが渓流に適応する過程で細い葉に変化したと考えられます。同様の形態変化は本土の渓流種でも起きているため、この植物群では陸上型の共通祖先から細い葉をもつ種が独立に誕生したと推定されます。こうした「繰り返し進化」は進化学的にも珍しく興味深い事例となりました。
本研究成果は、2021年6月30日に、国際学術誌「Acta Phytotaxonomica et Geobotanica」に掲載されました。
図:ヤンバルアオヤギバナの形態(自生地での生態写真:左)とその進化経路(右)(写真:沖縄美ら島財団 阿部篤志氏撮影)
研究者情報
研究者名:阪口翔太