2021-11-10 京都大学
北尾晃一 医学研究科・日本学術振興会特別研究員、宮沢孝幸 ウイルス・再生医科学研究所准教授、中川草 東海大学講師の研究グループは、哺乳類ゲノムの内在性レトロウイルスの解析により、太古のレトロウイルスに共通する遺伝子の発現制御配列を発見しました。
地球の歴史の中では多くのウイルスが生まれては絶滅していったと考えられます。化石として残らない古代ウイルスを知るには宿主ゲノムに入り込んだウイルスの痕跡(内在性ウイルス)が重要な手がかりとなります。今回、本研究グループは、哺乳類の内在性のレトロウイルスの解析によって古代レトロウイルスの遺伝子の発現制御メカニズムの解析を試みました。そして、本研究グループが発見したRNA制御配列「SPRE」が300種類以上の哺乳類内在性レトロウイルスにみられることを見出し、SPREが内在性レトロウイルス遺伝子発現を制御する機能について実験的に証明しました。一方で、SPREは現存する感染性レトロウイルス(HIVなど)には見つかりませんでした。およそ3,000万年前に流行した太古のレトロウイルスが、現存するレトロウイルスと異なるRNA制御配列をもっていたことを明らかにした本研究は、我々の知らないユニークな特徴が今後も古代ウイルスから見つかる可能性を示しています。
本研究成果は、2021年11月10日に、国際学術誌「Retrovirology」に掲載されました。
本研究のアウトライン:哺乳類ゲノムに残るレトロウイルス感染の痕跡「内在性レトロウイルス」を解析することで、太古のレトロウイルスのRNA制御配列を同定し、その遺伝子発現促進機構を実験的に検証しました
研究者情報
研究者名:宮沢孝幸