全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について

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5年生存率、10年生存率データ更新 グラフデータベースKapWeb更新

2021-11-10 全国がんセンター協議会,国立がん研究センター

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、所在地:東京都中央区)の研究開発費に基づく研究班「施設をベースとしたがん登録情報の収集から活用・情報発信までの効果と効率の最大化モデル構築のための研究(以下、研究班)」研究班(班長:奥山絢子、所属:国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センター)は、全国がんセンター協議会(会長:中釜 斉、以下、全がん協)の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計し、全がん協ホームページで公表しました。

同研究班は、1997年診断症例より部位別臨床病期別5年生存率、1999年診断症例より施設別5年生存率を公表し、2012年からはグラフを描画する生存率解析システム「KapWeb」を開設、2016年からはより長期にわたる生存率を把握するため10年生存率を公表するなど、先駆的な取り組みを行い諸問題の調査、研究に取り組んでいます。

全がん協生存率調査:https://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/index.html

生存率の統計について

現在、公表されている規模の大きな生存率統計の最新のものは、都道府県が行う地域がん登録に基づく2009年から2011年に診断された22府県、約59万症例の5年相対生存率、がん診療連携拠点病院等が行う院内がん登録に基づく2012年から2013年に診断された全都道府県413施設、約 83万症例による5年実測・相対生存率、2008年に診断された全都道府県240施設、約24万症例による10年実測・相対生存率、今回公表の全がん協の5年実測・相対生存率と10年実測・相対生存率となります。一方、2016年1月より開始された全国がん登録において同年診断症例の5年生存率が公表されるのは、2022年以降になります。

今回の公表ポイント

  • 5年相生存率は2011から2013年症例で10回目の公表。全部位の5年相対生存率は68.9%(前回、2010から2012年症例68.6%)。
  • 10年相対生存率は、2005から2008年症例で7回目の公表。全部位の10年相対生存率は58.9%(前回、2004から2007年症例58.3%)。
  • がん診療連携拠点病院の中のがんセンターなど、限られた施設のデータではあるが、10年生存率を過去と比較できるのは、現時点で全がん協生存率調査のみ。
  • がん種、病期、治療法など様々な条件設定で10年生存率を描画できるグラフデータベースは、現時点でKapWebのみ。
  • 診断からの経過日数を指定してサバイバー生存率をグラフ描画できるのはKapWebのみ。

データベース概要

対象施設

全国がんセンター協議会 32加盟施設 (2021年現在)

北海道がんセンター、青森県立中央病院、岩手県立中央病院、宮城県立がんセンター、山形県立中央病院、茨城県立中央病院、栃木県立がんセンター、群馬県立がんセンター、埼玉県立がんセンター、国立がん研究センター東病院、千葉県がんセンター、国立がん研究センター中央病院、がん研有明病院、都立駒込病院、神奈川県立がんセンター、新潟県立がんセンター新潟病院、富山県立中央病院、石川県立中央病院、福井県立病院、静岡県立静岡がんセンター、愛知県がんセンター、名古屋医療センター、滋賀県立総合病院、大阪医療センター、大阪国際がんセンター、兵庫県立がんセンター、呉医療センター・中国がんセンター、山口県立総合医療センター、四国がんセンター、九州がんセンター、佐賀県医療センター好生館、大分県立病院

収集症例

1997年から2013年までに全がん協加盟32施設で診断治療を行った876,679症例

集計対象

5年生存率:2011年から2013年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした151,568症例

10年生存率:2005年から2008年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした120,649症例

集計基準
  • 15歳から94歳までの症例(15歳未満、95歳以上は除外)
  • 良性腫瘍、上皮内がん、0期、転移性腫瘍は除外
  • 自施設診断自施設治療、および他施設診断自施設治療症例(診断のみは解析対象外)
  • 以下の基準を満たした施設のデータのみを集計
    – 臨床病期判明率60%以上
    – 追跡率(予後判明率)90%以上
実測生存率、相対生存率とは

生存率には、実測生存率と相対生存率があります。実測生存率とは、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率で、この中にはがん以外の死因による死亡も含まれます。一方、相対生存率は、がん以外の死因による死亡などの影響を取り除いたもので、患者集団の実測生存率を、患者集団と同じ性・年齢構成の一般集団における生存率で割ることによって算出されます。

生存率算出における課題

生存率は、登録精度の高いがん登録が行われることで、初めて信頼に足る生存率が算出可能となります。今回の生存率集計では施設・部位・年などのグループによっては、追跡率が90%未満の場合が存在しています。これは、個人情報保護に対する自治体の対応の違いにより、住民票照会が困難な市区町村の存在が一因と考えられます。今回の公表を通して、予後情報の活用に対する理解と関心がさらに高まり、正確な予後情報の確認調査が可能な体制の充実が期待されます

5年生存率

  • 2011年から2013年に診断治療を行った32施設151,568症例について、病期不明症例を含む全症例と手術症例の5年生存率を部位別に算出しました。
  • 算出した部位は、22種です。
  • 2007年10月4日に1997年から1999年症例について初めて公表してから、2010年から2012年症例(注)に続いて10回目の公表となります。
    注意:病期不明症例を含む全症例と手術症例による算出
部位別算出(別紙表1.全がん協部位別臨床病期別5年生存率 参照)

部位別臨床病期別に、病期不明症例を含む全症例と手術症例の生存率および病期判明率、手術率、追跡率を算出し、一覧で表示しています。

相対生存率算出結果の概要(一部抜粋)

全部位全臨床病期の5年相対生存率(病期不明症例を含む全症例)は68.9%でした。

注:数値は部位別の病期不明症例を含む全症例の5年相対生存率

注:( )内の数値は、2010年から2012年症例の5年相対生存率

  • 全部位 68.9%(68.6%)
  • 食道 50.1%(48.9%)
  • 胃 75.4%(74.9%)
  • 大腸 76.8%(76.5%)
  • 肝 38.6%(38.1%)
  • 胆のう・胆管 28.7%(28.9%)
  • 膵臓 12.1%(11.1%)
  • 喉頭 80.4%(82.0%)
  • 肺 47.5%(46.5%)
  • 乳(女) 93.2%(93.6%)
  • 子宮頸 75.9%(75.7%)
  • 子宮体 86.2%(86.3%)
  • 卵巣 64.3%(65.3%)
  • 前立腺 100.0%(100.0%)
  • 腎臓など 71.0%(69.9%)
  • 膀胱 67.7%(68.5%)
  • 甲状腺 93.0%(92.6%)
注意事項

初回(1997年から1999年症例)の公表値は61.8%であり、相対生存率は上昇していますが、前回公表した相対生存率(2010年から2012年症例)と比較した場合、多くの部位で生存率の上昇を認める一方、低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められません。

10年生存率

  • 2005年から2008年に診断治療を行った32施設120,649症例について、病期不明症例を含む全症例と手術症例の10年生存率を部位別に算出しました。
  • 算出した部位は、18種です。
  • 10年相対生存率の算出は、2016年10月22日に1999年から2002年に診断治療を行った症例を公表してから、7回目の公表となります。
部位別算出(別紙表2.全がん協部位別臨床病期別10年生存率 参照)

部位別臨床病期別に、病期不明症例を含む全症例と手術症例の生存率および病期判明率、手術率、追跡率を算出し、一覧で表示しています。5年生存率と10年生存率ではデータベースが異なるためご留意ください。

相対生存率算出結果の概要 (一部抜粋)

全部位全臨床病期の10年相対生存率(病期不明症例を含む全症例)は58.9%でした(同じデータベースによる5年相対生存率は(66.1%)。

注:数値は各部位の病期不明症例を含む全症例の10年相対生存率

注:( )内の数値は、2004年から2007年症例の10年相対生存率

  • 全部位      58.9%(58.3%)
  • 食道 34.4%(31.8%)
  • 胃 67.3%(66.8%)
  • 大腸 69.7%(68.7%)
  • 肝 17.6%(16.1%)
  • 胆のう・胆管 19.8%(19.1%)
  • 膵臓 6.6%(6.2%)
  • 喉頭 64.2%(63.3%)
  • 肺 33.6%(32.4%)
  • 乳(女) 87.5%(86.8%)
  • 子宮頸 68.2(68.7%)
  • 子宮体 82.3%(81.6%)
  • 卵巣 51.0%(48.2%)
  • 前立腺 99.2%(98.8%)
  • 腎臓など63.3%(62.8%)
  • 膀胱 63.0%(61.1%)
  • 甲状腺 86.8%(85.7%)
注意事項

前回公表した相対生存率(2004年から2007年症例)と比較した場合、多くの部位で生存率の上昇を認める一方、一部低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められません。

KapWeb

KapWeb(カップウェブ)は、部位、病期、性別、年齢、初回治療など様々な条件を組み合わせて相対生存率をみることができるデータベースで、2012年10月から一般公開しています。2016年1月からは1年から10年までの相対生存率をみることが可能になりました。(注意:6年から10年生存率は一部期間のみ)

今回新たに5年生存率算出のため2013年に診断治療を行った32施設55,220症例の情報と、10年生存率算出のため、2008年に診断治療を行った32施設50,226症例の情報を追加しました。

全がん協生存率

主な機能
  • 各種条件で絞り込みが可能な生存率解析システム
  • 条件設定により生存率を算出
    生存率の年次推移をグラフと数値の一覧表でみることが可能です。
  • がんサバイバー生存率の算出
    治療開始から一定期間生存した患者さんの生存率を集計(長く生存した患者さんほどその後の生存率の改善をみることが可能)。
  • 英語による表示も可能
  • エデラーII法での生存率の算出 (くわしいデータ画面ではI法かII法の選択可)
    エデラーI法は患者集団の年齢分布が変化しないものとして生存率を計算し、エデラーII法は患者集団の年齢分布が変化するものとして生存率を計算しています。
    患者集団の年齢構成は死亡者が増えると変わるため、エデラーII法がより実態に即した生存率の計算が可能です。
  • 生存率の解説、KapWebの使い方などを詳しく解説したパンフレット『がんの時代を生きぬくために(日本語版/英語版)』を掲載
  • 平均年齢および男女比を表示
活用方法
  • 患者さんの治療選択の参考情報。
  • 引き続き再発に注意が必要か、再発の多い時期を乗り切ったか等の見通しを得る。
データ提供に関する配慮

がん告知の直後など受容に必要な心の準備が整っていない患者さんや、生存率について情報を望まない方のために、説明と統計ページ回避画面を用意しています。

検索項目
  • 部位 全28種(一部重複あり)
  • 全部位、口唇・口腔・咽頭、舌、中咽頭、上咽頭、下咽頭、食道、胃、大腸(結腸・直腸)、結腸、直腸、肝、胆のう・胆管、膵臓、喉頭、肺(気管を含む)、骨、悪性黒色腫、皮膚、中皮腫、乳房、子宮、子宮頸部、子宮体部、卵巣、前立腺、腎・尿路(膀胱を除く)、膀胱、甲状腺
  • 臨床病期
  • 年齢
  • 性別
  • 手術(全症例、外科的、体腔鏡的(腹腔鏡、胸腔鏡)、内視鏡的(ポリープ切除など)、手術なし
  • 治療法(放射線治療、化学療法、免疫・BRM療法、内分泌療法)
  • 生存率(5年生存率、10年生存率、1年から10年までの生存率)

報道関係からのお問い合わせ先

国立研究開発法人 国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
担当:がん対策研究所 がん登録センター 院内がん登録室 高橋 ユカ

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