タイでサトウキビ搾りかすからエタノール原料などを製造する実証プラントが完成

ad
ad

日本発の分離膜技術で50%以上の消費エネルギー削減を目指し、運転開始へ

2018-07-06 新エネルギー・産業技術総合開発機構,東レ株式会社,三井製糖株式会社,三井物産株式会社

NEDOと東レ(株)、三井製糖(株)、三井物産(株)は、タイでバガスと呼ばれるサトウキビ搾汁後の搾りかすからバイオエタノール原料となるセルロース糖に加え、ポリフェノール、オリゴ糖といった高付加価値品を併産する、バガスを原料とした世界最大規模の実証プラントを完成させました。

本実証では、バガスから糖液を濃縮する工程で日本発の分離膜技術を活用することで、従来の蒸発法による濃縮工程と比べ50%以上の消費エネルギーの削減を目指します。2018年7月下旬から運転を開始し、省エネルギー性能や高付加価値品併産の有効性を検証します。将来は、世界有数のサトウキビ産地のタイにおいて、本システムの普及を図ります。

完成した実証プラントの全景の写真
図1 完成した実証プラントの全景

事業名:
エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業/余剰バガス原料から の省エネ型セルロース糖製造システム実証事業
事業期間:
2016年度~2022年度(予定)
施設規模:
処理能力5,000トン/年(乾燥バガスとして)
セルロース糖生産規模:
1,400トン/年(バイオエタノール700kL/年相当)
委託先:
東レ株式会社、三井製糖株式会社、三井物産株式会社
1.概要

タイは再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んでおり、2015年から2036年までの「石油代替エネルギー開発計画(AEDP2015)」で2036年までに消費エネルギー量の30%を再生可能エネルギーにすることを目標に掲げています。また、タイの長期経済開発計画として2015年に示された「タイランド4.0」では今後20年間(2017~2036年)の成長戦略として、バイオ化学品産業は将来の産業基盤の一つとして位置付けられており、タイ国内での同産業が今後活発化していくことが見込まれています。

こうした背景のもと、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、世界有数のサトウキビ産出国の同国において、非可食バイオマスであるバガスと呼ばれるサトウキビ搾汁後の搾りかすに着目しました。バガスには多くの有用物質が含まれていますが、現在は発電燃料として使われており十分に活用されていませんでした。そこでNEDOは、2016年8月、タイ科学技術省国家イノベーション庁(NIA)と、バガスの新たな有効利用に向けた実証事業に関する基本協定書(MOU)を締結し、実証に向けたプラントの設計、建設を進めてきました。

今般、NEDOと東レ株式会社、三井製糖株式会社、三井物産株式会社は、東レ(株)の膜利用バイオプロセス※1を利用して、バガスからバイオエタノール原料や各種化学品原料となるセルロース糖に加え、ポリフェノール、オリゴ糖といった高付加価値品を効率よく併産する、バガスを原料とした世界最大規模の実証プラント(生産能力:セルロース糖1,400トン/年[バイオエタノール換算で700kL/年]、ポリフェノール250トン/年、オリゴ糖450トン/年)をウドンタニ県に完成させ、2018年7月下旬に運転を開始します。本実証で、従来の糖液の蒸発濃縮法※2と比較して、有用物質の製造に要する消費エネルギーの50%削減を目指します。

7月6日(現地時間)には、実証運転開始にあたって、委託先3社が竣工式を開催し、日本およびタイ政府機関関係者や現地ウドンタニ県の関係者、現地企業、工事関係者らが出席しました。

バガスから有用物質(セルロース糖やオリゴ糖、ポリフェノール)を製造する工程フロー図

図2 バガスから有用物質(セルロース糖やオリゴ糖、ポリフェノール)を製造する工程フロー

実証プラント上面図(CBT社※3設備含む) 各工程の配置

図3 実証プラント上面図(CBT社※3設備含む) 各工程の配置

2.今後の予定

今後、2022年度(予定)まで実証プラントの運転を行い、省エネ効果、生産物の性能、システムの経済性などの評価・検証を行います。事業終了後は、バガスを排出する製糖業者に対して本事業成果を活用した有用物質の製造工場の建設・稼動を支援していきます。また、高分子膜利用技術による省エネ型の有用物質製造技術の教育セミナーやPR活動を行い、タイにおいてシステムの普及・展開を図ります。

【注釈】
※1 膜利用バイオプロセス
糖化、精製のプロセスに水処理用分離膜を使用することにより、非可食バイオマスから高品質、かつ低コストな糖原料の製造と精製エネルギーの約50%を削減可能にする技術。
※2 糖液の蒸発濃縮法
糖液に含まれる水分を熱により蒸発させ濃縮する方法で、多量のエネルギーを必要とする。本実証システムでは、高分 子膜技術を用いて濃縮を行うため、エネルギー消費を削減できる。
※3 CBT社
Cellulosic Biomass Technology Co., Ltd.の略称。東レ(株)と三井製糖(株)の合弁会社で2017年1月設立。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:吉井

NEDO 国際部 担当:石森

東レ(株) 研究・開発企画部 CR企画室 担当:澤井

三井製糖(株) 研究開発部 担当:宮崎

三井物産(株) 広報部報道室 担当:辰己

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、坂本、髙津佐

ad

有機化学・薬学
ad
ad
Follow
ad
テック・アイ生命科学
タイトルとURLをコピーしました