2022-04-20 京都大学
健康に良いと様々な効能が謳われる各種サプリメントを、大量に摂取する人がいます。しかし、医薬品と異なり手軽に手に入るサプリメントの取り過ぎが、その効能とは逆の悪い作用を体に及ぼしうるかどうかについては、未だ十分に検証されていません。
岡村 均 薬学研究科名誉教授(現・医学研究科研究員)、Jean-Michel Fustin マンチェスター大学生物学研究科博士(Future Leaders Fellow)らの国際共同研究グループは、肝臓や関節の働きを助け、気分を上げると言われるサプリメントS-アデノシルメチオニン(SAMe)の体内時計に及ぼす影響を、最新の生物学の手法を用いて検証しました。 体内時計の分子本体である時計遺伝子は、全身の細胞にあって時を刻んでおり、これが、睡眠/覚醒やホルモンのサイクルだけでなく、消化、代謝、食欲、免疫など、体のほとんどの機能を調律しています。
本研究グループは、SAMeが体内時計により駆動される生体リズムを障害することを見つけました。SAMeが体内でアデニンとメチルチオアデノシンに分解され、この分解産物が、有害物質としてリズム周期を異常にしたのです。これまで、より多くのSAMeがあれば、メチル化を促進して、健康に良いのではないかと思われてきました。しかし、過剰量のSAMeを摂ることは、逆に危険を伴うことを示唆しています。サプリメントに関しても、医薬品と同様、十分注意して服用することが重要でしょう。
本成果は、2022年4月5日に英国の国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。
図 SAMeは通常、私たちの健康にとって重要な代謝経路であるメチルサイクルで内因的に生成される。SAMeを摂取することで、この経路が促進されると考えられている。しかし、過剰なSAMeは、代わりにメチオニンサルベージ経路で代謝され、メチルチオアデノシンおよびアデニン合成の増加につながる。
研究者情報
研究者名:岡村 均
研究者名:Jean-michel Fustin