2022-04-25 京都大学
ネコはヒトに非常に身近な動物でありながら、これまでネコがヒトの発話を識別しているのか、科学的には全くわかっていませんでした。そこで、高木佐保 文学研究科日本学術振興会特別研究員(PD)(現:麻布大学特別研究員/日本学術振興会特別研究員(SPD))、荒堀みのり 同日本学術振興会特別研究員(DC1)(現:アニコム先進医療研究所株式会社 研究員/京都大学野生動物研究センター 特任研究員)、千々岩眸 同教務補佐員(現:大阪大学大学院人間科学研究科 特任研究員)、藤田和生 同教授(現:名誉教授)、黒島妃香 同准教授、齋藤慈子 上智大学准教授、子安ひかり 麻布大学博士後期課程学生(現:同特任助教)、永澤美保 同獣医学部講師(現:准教授)、菊水健史 同教授らの共同研究グループは、ネコが同居する他のネコや同居するヒト家族の名前と顔の対応を理解しているのか、家庭で飼育されているネコとネコカフェで飼育されているネコを対象に調べました。
モニターの前にネコを座らせ、同居する他のネコの名前(実験1)もしくは同居するヒト家族の名前(実験2)を呼ぶ声を再生した後に、それらの名前の人物と一致・もしくは不一致の顔写真を呈示しました。もしネコが同居するネコやヒトの名前と顔の対応を理解しているのであれば、期待違反法により不一致条件でモニターを注視する時間が増えることが予想されます。実験の結果、実験1では家庭ネコ群で名前と不一致のネコ写真を長く見ることがわかりました(ネコカフェ群では注視時間に条件間の差はみられませんでした)。実験2では、全体的な差は見られませんでしたが、詳しくみると、飼育期間が長く・家族の多い家庭で飼育されているネコほど、名前と不一致の家族写真を長くみることがわかりました。これらの結果から、少なくとも家庭で多頭飼育されているネコは、同居する“友達”の名前を認識しており、その名前を聞いた時に、その個体の顔を予測することがわかりました。また、実験2からヒト家族の名前の学習には、どれくらいその名前を聞く機会があるのかが関係している可能性が示唆されました。
ネコは科学的にはヒトの発声をどの程度理解しているのかはわかっていませんでしたが、ヒトとの日常生活の中で、特に訓練せずとも、ある個体の名前とその個体の顔との対応を学習していることがわかりました。
本成果は、2022年4月13日にドイツ-イギリスの国際学術誌「Scientific Reports誌」にオンライン掲載されました。
本研究の概要図
研究者情報
研究者名:荒堀 みのり
研究者名:藤田 和生
研究者名:黒島 妃香