睡眠時無呼吸患者に対する遠隔モニタリングを用いた減量支援~遠隔医療の新たなエビデンスの確立~

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2022-08-23 京都大学

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の標準治療である持続気道陽圧(CPAP)療法では、医療者が患者さんの機器の使用記録を遠隔でモニタリングし、管理・指導することが、機器使用のアドヒアランス向上に有効であることが報告されています。しかし、OSAの患者さんは高い確率で肥満や高血圧といった生活習慣病を合併するため、CPAP療法のみならず生活習慣への介入を含めた包括的な診療アプローチが重要です。

今回、村瀬公彦 医学研究科特定助教(現:トロント大学リサーチフェロー)、陳和夫 同特定教授(現:日本大学教授、京都大学医学研究科特任教授(非常勤))、平井豊博 同教授、権寧博 日本大学教授らを中心とする共同研究チームは、CPAP遠隔モニタリング中のOSA患者さんの肥満に対して、日々の体重・血圧・歩数データを遠隔モニタリングし、管理・指導することの有用性を明らかにする研究を行いました。

まず、研究開始時に、インターネット回線を通じて測定データを送信できる体重計・血圧計・歩数計を全参加者に貸与し、日毎の測定データの送信および減量を促しました。その後、(1)CPAPの使用記録のみを医療者が遠隔モニタリングして、管理・指導する群(通常遠隔モニタリング群)と、(2)CPAPの使用記録に加え、体重・血圧・歩数のデータも遠隔モニタリングして、管理・指導する群(遠隔減量指導群)の2群に無作為に割り付けし、半年間経過を観察しました。結果、遠隔減量指導群にて、より多くの参加者が減量に成功し、毎日の歩数についても通常遠隔モニタリング群を上回っていました。遠隔モニタリングを行い管理・指導する対象をCPAPデータだけではなく、患者さんが自身で測定できる体重・血圧・歩数といった項目も加えることで、患者さんの健康管理を促進できる可能性が示されました。

本研究成果は、2022年8月20日に、胸部疾患専門医会誌「CHEST」にオンライン掲載されました。

睡眠時無呼吸患者に対する遠隔モニタリングを用いた減量支援~遠隔医療の新たなエビデンスの確立~
体重・血圧・歩数を遠隔モニタリングし、管理・指導した方が減量効果が大きかった

研究者のコメント

「この研究により、遠隔医療の有用性を示すエビデンスが新たに追加され、OSAの患者さんの包括的な診療アプローチに新たな選択肢が加わったと考えています。遠隔モニタリングを用いて、参加者と担当医が定期的に日々のデータを共有し目標体重を再確認するという方法で、多くの参加者で減量目標を達成することができました。栄養指導や運動療法には医療者の専門知識が必要で、時間も要することから、今回のような単純な方法で多くの方で減量が達成できたことの臨床的意義は大きいと考えています。しかし、研究とは違う実際の日常診療の中で、この方法を実践していくためには、通信インフラの確立をどうするのか、費用対効果はどれくらいなのか、遠隔モニタリングが日常医療で普及するために健康保険制度へ導入できるのかなど解決するべき問題は山積しています。解決の糸口を探るべく、今後も地道に検証を継続していく予定です。」(陳和夫)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:平井 豊博

医療・健康
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