2022-09-09 東京大学医学部附属病院
がん治療の進歩により、がん患者の生存期間が延長したことで、慢性期に発症する心血管イベント、とりわけ心不全(注1)が臨床的に大きな課題となり“腫瘍循環器学”(注2)という新たな学問領域として注目を集めています。高血圧(注3)は、一般人における心血管イベント発症の主要な危険因子であり、がん患者においても高頻度に合併することが知られています。しかし、がん患者における高血圧が心血管イベント発症と関連するのか、これまで明らかにされていませんでした。
この度、東京大学の小室一成教授、金子英弘特任講師、佐賀大学の野出孝一主任教授、香川大学の西山成教授、滋賀医科大学の矢野裕一朗教授らの研究グループは、日本の大規模な疫学データベースを解析することで、がん患者において、血圧が高いことは心不全などの心血管イベント発症と関連することを明らかにしました。本研究の成果は、血圧管理を通じてがん患者の予後が改善しうる可能性を示唆し、腫瘍循環器学という新しい分野の発展に貢献することが期待されます。なお本研究は、厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「診療現場の実態に即した医療ビッグデータ(NDB等)を利活用できる人材育成促進に資するための研究」(課題番号:21AA2007、研究代表者:康永秀生)の支援により行われ、日本時間9月9日に米国科学誌Journal of Clinical Oncologyに掲載されました。