2023-01-30 京都大学
神経や遺伝子のネットワークが生物にとって重要な情報処理を行っていることに疑いの余地はありませんが、一方で、なぜ生物ネットワークが適切に情報を処理できているのかは、極めて難しい問題です。生物ネットワークを模した数理モデルを考え、その情報伝達の特徴を理論的に調べることは有力な手段ですが、単純なネットワークモデルであっても情報の流れを記述する公式を導くことは容易ではなく、生物ネットワークでしばしば見られる三角構造(ネットワークモチーフ)がどのような情報伝達の役割を果たしているのかは分かっていませんでした。
岡田崇 医生物学研究所特定准教授と森史 九州大学助教の研究チームは、ネットワークモデル上の情報流を記述する公式を独自に導出し、それを適用することで、各ネットワークモチーフがもつ情報伝達の役割を明らかにしました。具体的には、ポジティブフィードフォワードモチーフは高周波の入力を、ネガティブフィードフォワードモチーフは低周波の入力を遮断するフィルターの役割を備えていることが分かりました。情報処理ネットワークにおける情報転送プロセスの最小単位を明らかにした今回の発見は、ネットワーク全体の情報処理メカニズムの解明に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2023年1月24日に、雑誌「Physical Review Research」に掲載されました。
代表的なネットワークモチーフ。生物ネットワークでは、しばしば、このような三角構造が見られるため、情報伝達においても重要な役割を果たしていると考えられていたが、情報の流れの特徴は明らかにされていなかった。
詳しい研究内容について
ネットワークの三角構造が担う情報伝達の役割を解明-数理モデルから生物の情報処理メカニズムに迫る-
研究者情報
研究者名:岡田 崇
関連部局
医生物学研究所