新生仔マウス三叉神経節のヒゲ投射領域における自発神経活動

ad

2022-10-03 国立遺伝学研究所

脳の神経細胞は外界からの入力がなくても発火します(自発神経活動)が、子供の脳には成体とは異なる特徴的な自発神経活動が見られ、その発生機序や役割が注目されています。子供期特異的な自発活動に関して、視覚系や聴覚系での研究は比較的進んでおり、それぞれ、網膜と内耳で自発活動が発生し、脳に伝達されることが知られています。一方、我々が最近、新生仔マウスの大脳皮質体性感覚野で発見したパッチワーク型の自発活動(2018年1月4日プレスリリース参照)がどこで発生するかについてはわかっていません。我々はこれまでの実験結果から、これらの自発活動の多くはヒゲ(感覚器)と脳を結ぶ三叉神経節(TG)で発生すると考えています。今回の研究では、新生仔マウスから三叉神経節を摘出してex vivoで観察することにより、三叉神経節のヒゲ投射領域の神経細胞が“外部からの刺激なし”に自発的に発火することを発見しました。一方、成体マウスから摘出した三叉神経節はほとんど発火しませんでした。三叉神経節の神経細胞の大部分は痛み伝達に関わる「小さい細胞」ですが、新生仔期の自発活動は触覚を伝達する「大きな神経細胞」で主に発生していました。また、同期して発火する神経細胞は互いに近距離にあることもわかりました。1本のヒゲに投射する神経細胞は互いに近距離に存在することから、新生仔期の三叉神経節では、同じヒゲに投射する神経細胞が同期して発火している可能性が示唆され、こうした自発活動が脳に伝えられ、パッチワーク型の神経活動として体性感覚系神経回路の成熟に重要な役割を担う可能性が考えられます。

Figure1

図:新生仔マウスから摘出した三叉神経節での自発活動
新生仔マウスから三叉神経節(TG)を摘出しex vivo で観察したところ、ヒゲ触覚を担当する「大きな神経細胞」が“外部からの刺激なしに”自発的に発火することが観察された。一方、「小さな細胞(痛みを担当)」や成体ではほとんど発火が見られなかった。同期する細胞は同期しない細胞と比較して互いに近距離(両矢印)にあった。


Spontaneous Activity in Whisker-Innervating Region of Neonatal Mouse Trigeminal Ganglion.
P. Banerjee, F. Kubo, H. Nakaoka, R. Ajima, T. Sato, T. Hirata, T. Iwasato.
Scientific Reports (2022) 12, 16311 DOI:10.1038/s41598-022-20068-z

ad

生物工学一般
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました