双子葉植物のおしべの機能を簡単に取り除く方法を開発 ~多様な交配を実現し、気候変動に耐えうる作物の生産へ~

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2023-05-29 鳥取大学,科学技術振興機構

ポイント

  • 作物に多様性を導入する際には交配が必要で、交配のためには除雄する必要がある。しかし、植物種で方法が異なり、多大な労力が必要
  • 植物の受精前後に起こるさまざまな現象により多様性を拡大できない場合がある
  • トリフルオロメタンスルホンアミド(TFMSA)は化学合成に使用される試薬として一般的であり、世界中どこでも入手可能
  • 水で溶かした試薬を植物に処理するだけで多様な種を簡便に除雄
  • 植物を大量に除雄できる方法の開発により、簡便に交配することが可能。交雑後に起こるさまざまな現象の理解に期待

・気候変動、人口爆発により人類の食料生産はこれまでにないほどの困難に直面している。作物を改良する際には交配により多様性を導入する方法がある。交配を行う場合、除雄作業が必要である。

・除雄方法には温湯除雄法、薬品法、細胞質雄性不稔法、手作業による方法などが開発されてきたがどの方法も特定の種や品種でしか使うことができず、多大な労力と時間が必要であった。

・トリフルオロメタンスルホンアミド(TFMSA)は一般的な試薬で世界中どこでも入手できるが、非常に幅広い植物種に適応可能であることが本研究成果で明らかになった。

・この成果は、2023年5月25日(現地時間)にドイツの「Plant Reproduction」に掲載された。

本研究成果は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(アメリカ) クイーンズランド大学(オーストラリア)からの助成金、および科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR2001)による支援によって行われた。

研究の内容

植物に遺伝的な多様性を導入するためには、交配する必要がある。しかし、交配後にも様々なレベルの交雑障壁によって、導入できる多様性は非常に限られている。その理由として、交雑後に起こる交雑障壁に片側親のゲノム(染色体)が選択的に脱落する染色体脱落現象が挙げられる。これらの障壁を取り除くことが出来れば、多様な変異を持った植物を創り出すことが可能になるとが予想される。一方で、多様性の導入、染色体脱落などの交雑障壁の解明には多くの種を多数交配する必要がある。
植物を交配するためには、はじめに除雄作業が必須である。除雄方法には温湯除雄法、薬品法、細胞質雄性不稔法、手作業による方法などが開発されてきたがどの方法も特定の種や品種でしか使うことができず、多大な労力と時間が必要であった。

本成果では、一般的な試薬であるトリフルオロメタンスルホンアミド(TFMSA)を水に溶かし植物にスプレーすることにより、簡便に大量の植物を除雄する方法の開発に成功した。トリフルオロメタンスルホンアミドはこれまでにイネ科であるソルガム、トウモロコシなどの単子葉植物でその有効性が確かめられていたが、本成果によりササゲ(マメ科)、シロイヌナズナ(アブラナ科)、タバコ(ナス科)などの双子葉類植物の代表的なモデル植物でもその有効性が明らかになり、トリフルオロメタンスルホンアミドは植物の除雄方法として普遍的に利用が可能であることが示された。

<プレスリリース資料>
<論文タイトル>
“Chemical emasculation in cowpea (Vigna unguiculata (L.) Walp.) and dicotyledonous model species using trifluoromethanesulfonamide (TFMSA)”
DOI:10.1007/s00497-023-00469-4
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
石井 孝佳(イシイ タカヨシ)
鳥取大学 乾燥地研究センター 乾燥地農業領域 准教授

<JST事業に関すること>
内山 浩幹(ウチヤマ ヒロキ)
科学技術振興機構 創発的研究推進部

<報道担当>
鳥取大学 総務企画部 総務企画課 広報企画室
科学技術振興機構 広報課

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