脳のゆらぎを取り入れて AI を安全にする~深層ニューラルネットワークの隠れ層にゆらぎを導入し脆弱性を軽減~

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2023-09-16 東京大学

発表のポイント
◆人工知能の主要なモデルである深層ニューラルネットワークには、人間とは明らかに異なった間違いをするような脆弱性があることが知られており、人工知能を社会実装する上で重要な課題の一つである。
◆脳の神経細胞を模したゆらぎを深層ニューラルネットワークに導入することで、特定のタイプの脆弱性を軽減できることを発見した。
◆本研究は、脳の神経細胞のゆらぎの役割に関する新しい仮説を提唱するだけでなく、より人間の振る舞いに近い安全な人工知能を作成する上での示唆を提供する。


画像認識 AI の隠れ層にゆらぎを導入することで正しく画像を認識できるようになった。

発表概要
東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 統合生理学分野の大木研一教授と浮田純平大学院生(研究当時)の研究チームは、深層ニューラルネットワーク(注 1)に脳の神経細胞を模したゆらぎ(注 2)を導入することで、深層ニューラルネットワークが持つ脆弱性の一部が軽減できることを明らかにしました。
現在、人工知能(AI)の進化が加速度的に進んでいますが、その基礎となる構造は深層ニューラルネットワークに基づいています。しかし深層ニューラルネットワークは、敵対的攻撃と呼ばれる悪意のある攻撃によって、人間とは明らかに異なる出力をするように騙されてしまうことが知られています。例えば自動運転車に搭載された画像認識 AI は、「止まれ」の道路標識を正しく「止まれ」と認識して車が停止する必要があります。しかし敵対的攻撃によって生成された「止まれ」の道路標識は、人間が見ると明らかに「止まれ」の標識であっても、画像認識 AI は正しく認識できません。結果、車が停止できず、交通事故につながる恐れがあります。このように、AI を社会実装する上で、敵対的攻撃に対する脆弱性は大きな課題の一つです。
人間など動物の脳の性質を AI に取り入れることで、このような脆弱性を克服できる可能性があります。本研究チームは、脳の神経細胞が持つゆらぎを参考に深層ニューラルネットワークにゆらぎを導入することで、特定のタイプの脆弱性が軽減できることを明らかにしました。この方 2 / 5 法を用いることで、より人間などの動物の振る舞いに近い AI が作成できる可能性が高くなると考えられます。
本研究は、Beyond AI 研究推進機構、日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」、文部科学省科学研究費助成事業、CREST-JST などの支援を受けて行われました。本研究の成果は Neural Networks 誌(9 月 15 日オンライン版)に掲載されました。

詳しい資料は≫

生物工学一般
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