2024-2-29 アメリカ合衆国・ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)
・ LBNL が、人工のエコシステムプラットフォームの「EcoFABs」を開発。
・ 土壌中に大量の炭素を貯蔵する植物と微生物間の働きによる、相互に有益な関係性の理解は、より優れたバイオエネルギー作物の開発を助けるものだが、研究室で自然の環境を再現することは困難。
・ EcoFABs は、テイクアウトボックスほどのサイズのプラスチック製のチャンバーで、モデル植物やその根の周囲に生息するモデル微生物について実験を行うために標準化された、再現可能なプラットフォーム。栄養の不足した土壌でも成長できたり、大気中の炭素をより多く吸収できたりするエネルギー作物の研究開発の進展に貢献する。
・ EcoFABs は、科学者間でのデータ共有を促進し、相互の成果を発展させる植物-微生物研究のプラットフォームの必要性に対応するために開発されたもの。現在は約 20 ヶ所の研究機関で使用されているが、将来的には世界的な普及を期待している。
・ 植物の成長に不可欠な窒素がバイオエネルギーグラスのモデルとして使用される、小さなイネ科牧草の Brachypodium の根が放出する有機物の生産に与える影響ついて EcoFABs で調査。複数の窒素源(アンモニア、硝酸塩または両方)を供給し、根分泌物の組成の変化を観察した。
・ その結果、窒素レベルの違いによって根分泌物の種類が変化することと、アンモニアと硝酸塩の両方を受けた植物が最も良く成長することを確認。また、その場合にのみ根分泌物でドーパミンが生成されたことを発見した。このことは、特定の栄養条件が特定の代謝産物の生産に影響し、それが植物の成長に影響を与える可能性のあることを示唆している。
・ EcoFABs をロボット工学や AI 学習と組み合わせることで、植物の微生物叢研究での発見の速度を飛躍的に向上させる可能性がある。LBNL では、EcoFABs 実験を自律的に実施する自動ロボットシステムの「EcoBOT」も開発中。最終的には両者を組み合わせた完全な自動化を目指している。
・ EcoFABs はまた、学習プラットフォームとしてカリフォルニア州の高校やコミュニティーカレッジ等への導
入が進められている。
・ 本研究は、米国エネルギー省(DOE) 科学局(SC)が支援した。
URL: https://newscenter.lbl.gov/2024/02/29/ecofabs-could-lead-to-better-bioenergy-crops/
関連情報
Science Advances 掲載論文(フルテキスト)
Reproducible growth of Brachypodium in EcoFAB 2.0 reveals that nitrogen form and starvation modulate
root exudation
URL: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adg7888