細胞内小器官ペルオキシソームの新たな機能を発見

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ミトコンドリア動態及び細胞死の制御

2019-05-27 東京大学

東京大学大学院薬学系研究科の田中秀明大学院生、岡崎朋彦助教、後藤由季子教授らの研究グループは、細胞内小器官ペルオキシソームが、ミトコンドリアを伸長させるというミトコンドリア動態制御機能を持つことを明らかにしました。さらに、この機能が破綻することでミトコンドリアが断片化し、ミトコンドリアを経由する細胞死誘導経路が異常に活性化し、ストレス感受性が亢進することも明らかにしました。本研究成果は2019年5月10日付でJournal of Cell Science電子版に掲載されました。

ペルオキシソームはほぼすべての細胞がもつ脂質一重膜で覆われた細胞内小器官(オルガネラ)であり、主に脂肪酸の酸化や活性酸素の除去といった細胞の代謝機能を担うことが知られています。ペルオキシソームの機能欠損はZellweger症候群(ZS)をはじめとする非常に重篤な疾患の原因となることから、ペルオキシソームが生体内で重要な役割を果たしていることは明らかです。しかしながら、ペルオキシソーム欠損がどのような機構でZSの症状を引き起こすかについてはほとんどわかっておらず、その機能には未だに謎が多く残されています。また、ペルオキシームによる代謝機能の一部は別のオルガネラであるミトコンドリアと協調して制御されていることも知られていますが、他にどのようなペルオキシソームーミトコンドリア間相互作用が存在するかも明らかにされていませんでした。

今回研究グループは、ペルオキシソームが実はミトコンドリアを伸長させるというミトコンドリア動態制御機能を持つことを明らかにしました。更にこの機能が破綻することでミトコンドリアが断片化し、ミトコンドリアを経由する細胞死誘導経路の異常活性化と、ストレス感受性の亢進が起こることも明らかにしました。

ミトコンドリアの分裂・融合は神経細胞分化や細胞死誘導制御など様々な生理機能を持つ重要な現象であり、この破綻はZSに似た様々な症状の原因となります。本研究で新たに見出されたペルオキシソームーミトコンドリア間相互作用を制御することが、ZSに対する治療法となる可能性があります。

「ペルオキシソームは、皆さんにはあまり馴染みのないオルガネラですが、実はとても重要な役割を果たしています」と田中大学院生は話します。「これからも、ペルオキシソームの重要性を探していきたいと考えています」。

論文情報

Hideaki Tanaka, Tomohiko Okazaki, Saeko Aoyama, Mutsumi Yokota, Masato Koike, Yasushi Okada, Yukio Fujiki, and Yukiko Gotoh, “Peroxisomes control mitochondrial dynamics and the mitochondrion-dependent pathway of apoptosis,” Journal of Cell Science: 2019年5月10日, doi:10.1242/jcs.224766.

論文へのリンク (掲載誌)

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