思春期にヤングケアラーの状態が長く続くと 精神的な不調を 抱えやすくなることを確認

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2024-07-11 東京大学

東京都医学総合研究所(所在地:東京都世田谷区、理事長:田中啓二)社会健康医学研究センター ダニエル・スタンヨン研究員(現 英国ロンドン大学キングスカレッジ)、西田淳志 センター長、東京大学(所在地:東京都文京区、総長:藤井輝夫)大学院医学系研究科 精神医学分野 笠井清登 教授(同大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)、安藤俊太郎 准教授らの研究グループは、思春期に長期に渡ってヤングケアラーの状態が続くと、精神的な不調を抱えるリスクが高まることを確認しました。

10歳から16歳の間に、親や祖父母、病気の親戚を長期に渡ってケアしている若者(長期ヤングケアラー)は、ケアをしていない若者に比べて精神的な不調を抱えやすく、特に14歳から16歳の間でヤングケアラー状態が継続していると、自分を傷つける行為(自傷行為)や、死にたくなる気持ち(希死念慮)を持つリスクが高まることも明らかにしました。

本研究成果は、「Journal of Adolescent Health」に日本時間2024年7月10日にオンライン出版されました。

<論文タイトル>
Investigating the differential impact of short- and long-term informal caregiving on mental health across adolescence: Data from the Tokyo Teen Cohort
(短期および 長期のインフォーマルなケア経験が思春期のメンタルヘルスに与える影響:東京ティーンコホート研究)

<発表雑誌>
Journal of Adolescent Health
DOI:  10.1016/j.jadohealth.2024.06.005
URL:   https://doi.org/10.1016/j.jadohealth.2024.06.005

研究の背景

これまでの研究から、親や祖父母、病気の親戚のケアをしているヤングケアラー状態にある若者は、そうではない若者よりも精神的な不調を抱えやすいことが分かっています。しかし、ケアをしている期間の長さによって、そのリスクが変わるかどうかは分かっていません。これまでの研究はヤングケアラー状態を1時点だけで捉えた研究がほとんどであり、特に日本の若者を対象にした継続的な追跡調査は行われていませんでした。本研究では、思春期児童を対象とした大規模追跡調査(東京ティーンコホート調査)のデータを用いて、10歳~16歳の間に4回にわたってヤングケアラーに関する調査を行い、ケアの期間と精神的不調との関連を検証しました。

研究成果

東京都内在住の2002年から2004年に生まれた思春期児童3171人に対して、10歳、12歳、14歳、16歳の4時点に実施した追跡調査の結果を分析しました。各時点で、毎日もしくはほぼ毎日家族の中の高齢者、病気を持つ人、または体の不自由な人の世話をしている児童を「ヤングケアラー」と分類しました。また、2時点で連続してヤングケアラーに当てはまる児童を「長期ヤングケアラー」、1時点目は当てはまらず、2時点目で新たにヤングケアラーに当てはまった場合を「短期ヤングケアラー」、その反対を「元ヤングケアラー」、どちらの時点にも当てはまらない場合を「ヤングケアラーでない」と分類しました。この4つのヤングケアラー分類と3つのメンタルヘルス指標(抑うつ・自傷行為・希死念慮)の関係を、性別、親の年収、家族構成、親の精神的不調の影響を取り除くよう統計学的に調整した上で分析しました。
分析の結果、精神的不調を抱えるリスクが特に長期ヤングケアラーで高いことが分かりました。一方、短期ヤングケアラーはどの年齢においてもメンタルヘルス不調との関連は見られませんでした。長期ヤングケアラーに当たる児童では、ヤングケアラーではない児童と比べて、14歳時点の抑うつが2.49倍、16歳時点の自分を傷つける行為(自傷行為)が2.51倍、死にたくなる気持ち(希死念慮)が2.06倍増加していました。

この研究が社会に与える影響

少子高齢化が進む日本では、今後家庭内でのインフォーマルなケアを担う若者にかかる負担が増えることが予測されます。思春期は心身の成長や社会関係の発達に重要な時期であるため、インフォーマルケアの負担が長期化しないよう、学校や公的機関が彼らに早い段階で気づき、その負担を減らすように支援をすることが重要と考えられます。

本研究の主な助成事業

本研究は日本学術振興会(JP19K17055, JP19H00972, JP20H01777, JP20H03951, JP20H03596, JP21H05171, JP21H05173, JP21H05174, JP21K10487, JP22H05211, JP23H02834, JP23H03174, JP23H05472, JP24H00666, JP24H00917, JP24K16821)、日本医療研究開発機構(JP19dm0207069, JP18dm0307001, JP18dm0307004)、科学技術振興機構ムーンショット型研究開発事業(JPMJMS2021)、東京大学(UTIDAHMおよびWPI-IRCN)の支援および東京都からの業務委託を受けて行われました。

【問合せ先】

≪研究内容について≫
公益財団法人 東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター
心の健康ユニット 西田 淳志(にしだ あつし)・山﨑 修道(やまさき しゅうどう)

≪広報担当連絡先≫
公益財団法人東京都医学総合研究所
事務局研究推進課 乙竹・鈴木

国立大学法人東京大学
医学部附属病院
パブリック・リレーションセンター

国際高等研究所 ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)
広報担当

医療・健康
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