2024-07-11 京都大学
三野享史 医学研究科助教、竹内理 同教授らの研究グループは、RNAヘリカーゼとして機能するRNA結合タンパク質UPF1がB細胞の初期分化に必須の機能を担っていることを明らかにしました。
B細胞は骨髄において、免疫グロブリン遺伝子の再構成や細胞増殖といった一連の過程を経ることで分化します。この過程により、ヒトは特異的で膨大なレパートリーの抗体を産生できるようになり、細菌やウイルスなどの多様な外敵に対する強固な生体防御システムが築き上げられます。これまで、B細胞の分化過程を制御する遺伝子の発現がどのようにコントロールされているのか詳細なメカニズムは明らかとなっていませんでした。
本研究では、RNA結合タンパク質UPF1が、1)初期大型プレB細胞における免疫グロブリン遺伝子のDNA再構成および、2)小型プレB細胞への分化における最適な遺伝子発現変化を制御することを明らかにしました。その際、UPF1が免疫応答、細胞周期、折りたたみ不全タンパク質応答に関連する遺伝子をコードするmRNAと結合し、mRNAの分解を誘導することでそれらの発現量を負に調節し、B細胞分化を制御していることを明らかにしました。本研究は、複雑なB細胞分化の分子メカニズムを解明したものです。B細胞は抗体を産生する重要な免疫細胞であり、本研究の成果は液性免疫不全(B細胞の異常)などの免疫疾患の病態解明に繋がると期待されます。
本研究成果は、2024年7月9日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
RNA結合タンパク質UPF1によるB細胞分化制御モデル
詳しい研究内容について
骨髄におけるB細胞分化を制御する新たなメカニズムを解明―mRNA制御が司るB細胞分化機構の発見―
研究者情報
研究者名:三野 享史
研究者名:竹内 理