体内埋め込み型の新たな医療用ソフトデバイスとして期待
2020-08-03 京都大学
浜地格 工学研究科教授、窪田亮 同助教、重光孟 同博士研究員(現・大阪大学助教)、中村圭佑 同博士課程学生、浦山健治 京都工芸繊維大学教授らの研究グループは、抗体に応答してタンパク質などのバイオ医薬を自律的に放出することが可能な複合ゲル材料の開発に成功しました。
生体内には、抗体のように、酵素ではないタンパク質が多く存在します。ある種の非酵素タンパク質はガン等の疾病環境で過剰発現していることから、これらのたんぱく質に応答して自律的に薬剤を放出する材料は、薬物放出担体として期待されています。ところが、タンパク質は酵素と異なり反応性を持たないため、タンパク質に応答する材料設計の指針は確立されていませんでした。本研究グループは、「タンパク質の存在により活性が回復する酵素スイッチシステム」と「酵素により分解する超分子ファイバー」を組み合わせ、これらを高分子ゲルに内包させた複合ゲル材料を開発しました。開発した複合ゲルは、抗体の添加により酵素スイッチがオンになり、超分子ファイバーの分解が進み、内部に包接させたバイオ医薬を放出することを明らかにしました。
本研究成果は、疾病環境においてタンパクや酵素のようなバイオ医薬品を自律的に放出できる、体内埋め込み型インテリジェント複合ゲル材料に展開できると期待されます。
本研究成果は、2020年7月31日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
図:本研究の概要図