炎症環境下における滑膜線維芽細胞の統合的解析で実現
2020-11-06 東京大学医学部附属病院
関節リウマチは、持続的な滑膜の炎症が関節破壊をもたらす代表的な自己免疫疾患です。近年登場した生物学的製剤や分子標的薬は、関節リウマチの治療を大きく発展させました。しかし、これら薬剤の効果が十分に得られない患者の存在や、これら薬剤の投与による全身的な免疫抑制が原因の重篤な有害事象が、治療を行う上で課題となっています。
東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科の土屋遥香 助教、太田峰人 特任助教(免疫疾患機能ゲノム学講座)、藤尾圭志 教授と、理化学研究所 生命医科学研究センターの鈴木亜香里 自己免疫疾患研究チーム副チームリーダー、山本一彦 センター長らの研究グループは、関節リウマチと変形性関節症(各30例)の滑膜線維芽細胞のゲノム、トランスクリプトーム、エピゲノムを統合的に解析し、炎症環境下の滑膜線維芽細胞における炎症メディエーター(炎症の引き金や増幅につながる物質)の発現とクロマチン(細胞核内にあるDNAとタンパク質の複合体)の構造変化および疾患感受性多型の関連を、初めて明らかにしました。この研究により、関節局所に存在する滑膜線維芽細胞を標的とした創薬候補が発見されたことで、既存の薬剤とは全く異なる経路を介した、より全身的な免疫抑制作用の少ない治療開発につながることが期待されます。
なお、本研究は、日本時間 11月 2日にヨーロッパリウマチ学会・学会誌Annals of the Rheumatic Diseasesに掲載されました。