2021-07-15 国立成育医療研究センター
国立成育医療センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)の好酸球性消化管疾患研究室 山本真由共同研究員、永嶋早織共同研究員、野村伊知郎室長は、免疫アレルギー・感染研究部 松本健治部長、アレルギーセンター 大矢幸弘センター長らとともに、厚労省指定難病である好酸球性消化管疾患注1において、症状がどのように現れるのか(自然歴注2)を調べる大規模調査を行いました。
この調査は、全国の消化管内視鏡を備えた1万の医療機関をランダムに選んでアンケートを送り、2,906の施設から、1,542名の患者について回答を得ました。そのうち、厳密な診断基準を満たした、好酸球性食道炎153名、好酸球性胃腸炎151名について詳細な解析を行いました。その結果、好酸球性食道炎・胃腸炎ともに、症状が継続して現れる「持続型」が全体の約65%を占めていることが分かりました。また、好酸球性胃腸炎では、5歳~17歳の小児期発症患者において「持続型」の占める割合が75%と突出して高いことも判明しました(図1)。このことから、子どもが長期間に渡り症状に悩まされている現状が浮き彫りになりました。現時点では、治療法は経口ステロイドが大半を占めています。小児期は成長発達において重要な年齢であることから、より副作用の少ない寛解導入維持治療の開発が重要と考えられます。
本研究成果は、2021年6月29日にアメリカの医学雑誌『Journal of Allergy and Clinical Immunology in Practice』で公開されました。
注1:好酸球性消化管疾患
好酸球性消化管疾患は、食物、花粉などが抗原となって非即時型の反応から炎症を起こし、好酸球が消化管に集まる疾患で、厚労省の指定難病です。食道に炎症が限られる好酸球性食道炎と、それ以外にも炎症を起こす好酸球性胃腸炎があります。
注2:自然歴
好酸球性消化管疾患において、症状がどのように現れ、どのくらい継続するのかなどをまとめた3つの型のことを言います。症状が出ると、6カ月以上の長期に渡って症状が続く「持続型」。1度症状が出たあと治まり、それ以降症状が出ない「単発型」。症状が出たり、治まったりを繰り返す「間歇(かんけつ)型」があります。
【図1 好酸球性胃腸炎における症状の現れ方の割合】
プレスリリースのポイント
- 好酸球性食道炎の発症年齢は、欧米と同じく30~50歳代の男性に多かったのですが、好酸球性胃腸炎は男女差がほとんどなく、発症時期も小児期と成人期の二峰性が見られるなど、大きな違いがありました。
- 好酸球性胃腸炎がどれだけ持続するか(自然歴)についての研究は、これまで小規模の研究しか行われておらず、本調査は世界初の大規模調査となります。
- 今回の大規模調査では、小児期発症(5歳~17歳)の好酸球性胃腸炎患者の75%が「持続型」であることが分かりました。
- 好酸球性胃腸炎は食道炎と比べて日常生活の制限を起こした患者が多いことが分かり、より重症であると考えられました。
- 5歳~17歳発症の好酸球性胃腸炎患者は、70%に日常生活の制限があり、最も重症度が高いことも分かりました。
発表論文情報
英文タイトル:「Comparison of Non-esophageal Eosinophilic Gastrointestinal Disorders with Eosinophilic Esophagitis: A Nationwide Survey」
和文タイトル:「非食道性好酸球性消化管疾患(好酸球性胃腸炎のこと)と好酸球性食道炎の比較:全国調査結果」
著者名:山本真由1)、永嶋早織1)、山田佳之2)、村越孝次3)、下山康之4)、高橋索真5)、
関英幸6)、小林隆7)、原裕一8)、只木弘美9)、石村典久10)、石原俊治10)、
木下芳一11)、森田英明12)、大矢幸弘13)、斎藤博久12)、松本健治12)、
野村伊知郎1,13)
所属:
1) 国立成育医療研究センター研究所 好酸球性消化管疾患研究室
2) 群馬県立小児医療センター アレルギー感染免疫・呼吸器科
3) 東京都立小児総合医療センター 消化器科
4) 群馬大学大学院医学系研究科 消化器・肝臓内科
5) 香川県立中央病院 消化器内科
6) KKR札幌医療センター 消化器センター
7) 藤田医科大学 ばんたね病院 消化器内科
8) 福岡山王病院 消化器内科
9) 国立病院機構横浜医療センター 小児科
10) 島根大学医学部 内科学第二(消化器内科)
11) 製鉄記念広畑病院 内科
12) 国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー・感染研究部
13) 国立成育医療研究センター アレルギーセンター
掲載誌:Journal of Allergy and Clinical Immunology in Practice
好酸球性消化管疾患 患者さん用情報WEBサイト
国立成育医療研究センターでは、好酸球性消化管疾患の情報を発信する患者さん向けサイトを運営しています。詳しくは、「好酸球性消化管疾患 患者さん用情報WEBサイト」をご覧ください。