発達障害の関連遺伝子の欠損で網膜・視覚機能が変化~発達障害において感覚の過敏や鈍麻が生じるメカニズムの解明に貢献~

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2021-12-07 大阪大学,専修大学,科学技術振興機構

発達障害の関連遺伝子の欠損で網膜・視覚機能が変化~発達障害において感覚の過敏や鈍麻が生じるメカニズムの解明に貢献~

ポイント
  • マウスにおいて発達障害の関連遺伝子Cyfip2の欠損により網膜・視覚機能が異常を示す
  • 感覚器に着目した発達障害の診断法や治療法の開発につながる
  • 「注目すべきは脳だけでなく感覚器も」という、今後の発達障害や脳研究の新たな方向性を示す

大阪大学 蛋白質研究所の古川 貴久 教授と茶屋 太郎 准教授の研究グループは、専修大学 人間科学部 心理学科の石金 浩史 教授と、大阪大学 免疫学フロンティア研究センターの奥崎 大介 特任准教授(常勤)と微生物病研究所の元岡 大祐 助教の研究グループと共同で、自閉スペクトラム症や学習障害をはじめとした発達障害に関連する遺伝子の欠損により、網膜・視覚機能が異常を示すことを明らかにしました。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)といった発達障害は、近年増加していることが世界的に報告されていますが、発達障害の原因はいまだ解明されておらず、世界中の研究者が注目しています。発達障害のある人においては高頻度で感覚の異常(感覚過敏や感覚鈍麻)が症状として現れることが知られていますが、その原因やメカニズムはほとんど明らかになっていません。私たちは、発達障害関連遺伝子であるCyfip2(CYFIP2)遺伝子を網膜において欠損させたマウスを作製し解析したところ、このマウスにおいて網膜と個体の視覚機能に異常が見られました。この結果から、人におけるCYFIP2遺伝子の変異と関連する視覚異常のメカニズムが明らかとなり、発達障害でしばしば見られる視覚異常の少なくとも一部は網膜の神経回路の変化に起因することが示唆されました。本研究は、発達障害の診断法や治療法の開発に貢献するだけでなく、発達障害で見られる感覚異常のメカニズム解明に向けて脳だけでなく網膜などの感覚器にも着目するという、今後の研究の方向性を示すものとなりました。

本研究成果は、英国科学誌「Human Molecular Genetics」に12月7日(火)(日本時間)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業(MS)JPMJMS2024、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金21H02657,20K07326、武田科学振興財団、上原記念生命科学財団、細胞科学研究財団、鈴木謙三記念医科学応用研究財団の支援を得て行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Deficiency of the neurodevelopmental disorder-associated gene Cyfip2 alters the retinal ganglion cell properties and visual acuity”
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
古川 貴久(フルカワ タカヒサ)
大阪大学 蛋白質研究所 教授

<JST事業に関すること>
小西 隆(コニシ タカシ)
科学技術振興機構 挑戦的研究開発プログラム部 プログラム推進グループ

<報道担当>
科学技術振興機構 広報課

医療・健康
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