2022-03-02 国立成育医療研究センター
国立成育医療研究センターの分子内分泌研究部 松原 圭子 上級研究員、鳴海 覚志 室長は株式会社ファーストアセントと共同で子どもの発達に着目したビッグデータ研究を行いました。延べ16,627人分のデータを調べたところ、養育者が日々の育児の中で記録した発達データの分布が現在広く用いられている基準データとおおむね一致することが確認されました。また、詳しい統計解析で、一部の項目において達成時期の分布が性別や季節で異なることを示しました。
プレスリリースのポイント
- 子どもが「歩く」「話す」といった様々な能力を獲得する過程を発達と呼びます。発達に関してこれまで多くの研究が行われてきましたが、いずれも「生後4か月」などの決まったタイミングでデータが集められていました。本研究は、養育者が日々の育児の中でリアルタイムに記録した発達データを用いた世界初の研究です。
- 延べ16,627人分の発達データが、現在知られる基準データ(厚労省調査、米国での研究など)とおおむね一致することが確認されました。また、詳しい統計解析の結果、「冬生まれの子の方は『おすわり』『ひとり歩き』など運動発達が早い」「ゆっくりと言語発達する子は男の子で多い」などの知見が得られました。
- 発達データのリアルタイムな「見える化」と、現在広く行われている節目月齢での乳幼児健診を組み合わせることで、発達を促すためのサポートが必要なお子さんを、より早期に、より確実に専門家につなげられるようになる可能性があります。
発達マイルストーン達成時期と子どもの特性の分析
(左)「はいはい」の達成時期の冬生まれの子と夏生まれの子での比較。冬生まれの子は全体的に達成が早かった。
(右)「『ママ』と呼ぶ」の達成時期の男女での比較。達成がゆっくりな子は男の子により多く見られた。
発表論文情報
英文タイトル:
『Achievement of Developmental Milestones Recorded in Real Time: A Mobile App-Based Study』
和文タイトル:
『発達マイルストーン達成のリアルタイム記録:スマートフォンアプリを用いた研究』
著者名:松原 圭子1), 服部 伴之2), 鳴海 覚志1)
1) 国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部
2) 株式会社ファーストアセント
掲載紙:The Journal of Pediatrics
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jpeds.2022.02.018
特記事項
本研究は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトの支援を受けて行われました。