”光濃縮”で がん細胞を狙い撃ち ~細胞内導入に必要な薬剤量を100分の1に~

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2022-12-16 大阪公立大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 光誘導加速により、がん治療に有用な分子を濃縮し、狙った細胞内に導入。
  • 細胞内小器官の染色試薬を従来の1000分の1の濃度で狙った細胞に導入し、染色。
  • 細胞死を起こす薬剤を従来の100分の1の濃度で狙ったがん細胞に導入し、破壊。

大阪公立大学 研究推進機構 協創研究センター LAC-SYS研究所の中瀬 生彦 所長補佐、飯田 琢也 所長、床波 志保 副所長らの研究チームは、がん治療に有用な生物機能性分子を細胞内導入する際の光誘導加速に関する新技術の基礎構築に成功しました。

本研究ではわずか100秒のレーザー照射による光発熱効果で発生した対流(光誘起対流)を駆使し、細胞表面に輸送・濃縮した生物機能性分子の選択的な生化学反応を光誘導加速して、有用な分子を従来よりも100〜1000分の1の低濃度で細胞内に濃縮導入できることを実証し、その機構解明につながる重要な知見を獲得しました。特に、数百ピコモル/リットル(p(ピコ):10-12)レベルの低濃度条件下でもミトコンドリア検出試薬などの低分子を細胞内の小器官に選択的に導入することに成功しました。さらには数十ナノモル/リットル(n(ナノ):10-9)レベルの低濃度の抗がん活性ペプチド(R8-PAD)をがん細胞内に濃縮導入し、狙った細胞群のアポトーシス(細胞死の一種)を誘発することにも成功しました。

本研究成果により、低濃度薬剤をターゲット病原細胞に選択的に導入することによる副作用低減のための知見獲得や、高価な新薬の細胞試験における薬剤量大幅削減による開発コストの低減が可能となり、創薬プロセスの期間短縮や開発費抑制にもつながると期待されます。

本研究成果は、2022年12月16日(金)(日本時間)、「Nano Letters」にオンライン掲載されます。

本研究はJST 未来社会創造事業「低侵襲ハイスループット光濃縮システムの開発(JPMJMI18GA、JPMJMI21G1)」(研究開発代表者:飯田 琢也)、科研費基盤研究(A)「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)におけるテーラーメード型癌腫標的薬剤の創製研究」(16H02612)(研究代表者:中瀬 生彦)、「多種生体サンプルを標的としたオンデマンド光誘導加速システムの創成」(17H00856)(研究代表者:飯田 琢也) JST 創発的研究支援事業「バイオミメティック電極による外場誘導型エコシステムの創成(JPMJFR201O)」(研究代表者:床波 志保)、大阪府立大学 キープロジェクト(「LAC-SYSプロジェクト ―次世代バイオフォトニクスが拓く未来―」)などの支援の下で実施されました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Light-induced condensation of biofunctional molecules around targeted living cells to accelerate cytosolic delivery”
DOI:10.1021/acs.nanolett.2c02437
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
中瀬 生彦(ナカセ イクヒコ)
大阪公立大学 大学院理学研究科/LAC-SYS研究所 教授/所長補佐

飯田 琢也(イイダ タクヤ)
大阪公立大学 大学院理学研究科 教授/所長

<JST事業に関すること>
小泉 輝武(コイズミ テルタケ)
科学技術振興機構 未来創造研究開発推進部

<報道担当>
大阪公立大学 広報課(担当:國田(クニダ))
科学技術振興機構 広報課

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