ヒト胚での3D 体節形成モデルをiPS 細胞から確⽴~ヒトの初期発⽣や先天性脊椎疾患の機序解明に期待~

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2022-12-22 京都大学

ヒトをはじめとした脊椎動物において、初期胚の⼀部である中胚葉から、⾻格や筋⾁などへとつながる体節を形成する過程は、初期発⽣における重要な現象です。しかしながら、体節形成メカニズムをはじめとしたヒト初期発⽣の研究を⽣体内で⾏うことは、技術的、倫理的な制約などから極めて困難であり、初期発⽣の理解につながる試験管内モデルの確⽴に向けた研究が世界的なトレンドとなっています。

京都⼤学⾼等研究院ヒト⽣物学⾼等研究拠点(ASHBi)Cantas ALEV(アレヴ・ジャンタシュ)特定拠点准教授が率いる研究グループは、ヒトiPS細胞を⽤いて、ヒトの初期発⽣における体節形成を再現する3次元細胞培養モデル(Axioloid:アクシオロイド)を確⽴しました。このアクシオロイドは、実際のヒト胚における体節構造の形態的な再現だけでなく、遺伝⼦の発現パターンなどの分⼦的特徴も備えており、これまで困難であったヒトの初期発⽣プロセスや、先天性脊椎疾患などの疾患形成メカニズムなどの理解に貢献することが期待されます。

本研究で、Alev研究室所属の山中良裕特定研究員ならびにSofiane HAMIDI(ハミディ・ソフィアン)同特定研究員は、京都⼤学や海外の他の研究者らの協⼒のもと、iPS細胞を⽤いて、初期発⽣におけるヒト胚と同様な3次元的な尾と軸を持つ体節様構造物の誘導に成功、アクシオロイドと命名しました。そのアクシオロイドの1)上⽪化された体節様構造物の周期的な形成において、レチノイン酸(RA)と細胞外マトリックス(ECM)分⼦の相乗作⽤が不可⽋である事を⽰し、アクシオロイドが2)実際のヒト胚との形態的な相同性に加えて、遺伝⼦の発現パターンなどの分⼦的特徴の類似性も備えていることを⽰しました。さらに、3)体節形成における重要な遺伝⼦(HES7、MESP2)に変異を持つiPS細胞(疾患様iPS細胞)から試験管内で先天性脊椎疾患を再現するアクシオロイドモデルの確⽴にも成功しました。

Alev研究室では、本研究で確⽴したアクシオロイド及びその関連研究を今後更に進めていくことで、ヒト胚との類似性をさらに⾼め、ヒトの初期発⽣プロセス解明に貢献していくことを⽬指します。

本成果は、2022年12⽉21⽇午後4時(GMT)に国際学術誌「Nature」にオンライン掲載されました。

詳しい資料は≫

論文書誌情報

タイトル
Reconstituting human somitogenesis in vitro

著者
Yoshihiro Yamanaka, Sofiane Hamidi, Kumiko Yoshioka-Kobayashi, Sirajam Munira, Kazunori Sunadome, Yi Zhang, Yuzuru Kurokawa, Rolf Ericsson, Ai Mieda, Jamie L. Thompson, Janet Kerwin, Steven Lisgo, Takuya Yamamoto, Naomi Moris, Alfonso Martinez-Arias, Taro Tsujimura & Cantas Alev

掲載誌
Nature

DOI
10.1038/s41586-022-05649-2

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細胞遺伝子工学
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